.。†蒼明の欠片†。.
静かなる策士2
ゴム質の皮がボロボロと剥がれ落ち、ゲリョスの肉があらわになった。
あまりの激痛にゲリョスは地に倒れ、悶絶している。
「アルでかしたね。まさかあんなこと考えてたなんて……!」
ハイネはいまだに驚いているような顔でゲリョスに追い打ちを与えている。
「なんだ、そんなことデスか……」
アルの顔が自然とにやける。
何かを察したような表情にも見える。
「ハイネ、至って簡単なことをしただけデスよ。氷で冷やされたガラスに熱い熱湯をかけると割れてしまうのと同じことをしただけデス。っていってもこれは常識デスけどねぇ〜」
「や、やだなぁ、知ってるに決まってるじゃん。ただすごいなぁって思ってただけだし…」
だれが見てもハイネの目が泳いでいるのは明らかである。
しかし、驚愕させられたのは確かだ。
スノウギアの氷属性とガンランスの砲撃を最大限に活かし、たった一手で戦況を180度変えてしまう。
壁際での竜撃砲といい、まさに策士といえよう。
彼に流れている竜人族の血がそうさせるのだろうか。
こんなことを言ったらアルに何と言われてからかわれるのかわからないので、ハイネは心の中にしまっておいた。
そうこうしている間にゲリョスは立ち上がり、体制を立て直してしまった。
しかも目が血走っている。
「二人ともふざけてないで気合い入れなさい!」
リーナが周りのゲネポスたちを蹴散らしながら大声を張り上げた。
リーナの喝は二人に伝わったようで真剣な顔つきに戻った。
ゲリョスに視線を送ると目を怒りの炎でたぎらせ、トサカからは若干閃光が漏れている。
完璧に逆鱗に触れてしまったようだ。
ハンターの中ではこう言われている。
狩りは標的が怒ったときが本番だと―――
そして、その時は死を覚悟で立ち向かえと―――――
ハイネの額から一筋の汗が流れた刹那、ゲリョスは一気に走り出した。
辺りに毒を撒き散らしながら一心不乱走る様はまさに“狂走”という名に相応しい。
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