婆裟羅 雨降る放課後<秀頼+信忠+α> ※次世代学パロです。 ※バサラ3発売前のネタですので、子飼いのキャラ違いはスルーしてください。 「あ?」 ざぁざぁと、激しい音を立てる雨の中。 煩わしさと、愛用の傘と共に中等部の集中下足棟にやって来れば、先客。 うす暗い空気をぼんやりと見つめる見知った影。 「…秀頼か」 「信忠くん?」 一部分だけ長い髪を翻して振り返った姿に、思わず納得。 「傘、持って来てねぇのか」 「今朝急いでて…つい」 眉を下げて困ったように笑う顔は、本当に豊臣秀吉(ちなみに校長)の息子かと思えるほど、優し気で。 「いつもくっついてるチビ、どうした」 「重門?今日は早退したんだ。体育で、利長くんのボールを直に喰らって…」 あぁ、そう言えば2限目辺りの時、妙に運動場が騒がしかったな。と、ぼんやり思う。 「…親父さんは?」 「父上と半兵衛さんは、職員会議で遅くなるって…」 要するに、雨が止むまで待つか・濡れて帰るかの究極の選択を迫られている状況にある、と。 ……俺の傘はそんなにデカくねぇ。普通の一人用サイズ。でも、ここまで来て見過ごすわけにもいかないだろ。 「おい、ひでよ」 「あ、来た!」 嬉しそうに声をあげた秀頼の視線の先を追うと。 色とりどりの塊が此方に向かって突進してきていた。 俺らとその塊との間の距離が50mくらいになったころ 『秀頼様──────!!!!』 高低差のある5種類の叫び声が、耳に痛い程響いた。 「大谷さん、石田さん、加藤さん、福島さん、小西さん!」 一人一人名前を呼ぶ秀頼は律儀だ。 お陰で思い出した。この5人組。確か秀頼んとこに仕えてる手伝いの奴らだ。 「秀頼さま!お待たせして申し訳ありません。何処も濡れてはいませんか?」 白い傘を差し出すのが、大谷。 「ズルいぞ紀ノ介!秀頼様、お風邪を召されます。さぁ俺の傘へ!!」 黒い傘で割って入るのが、石田。 「お前の傘は駄目だ佐吉!秀頼様、俺の傘へ!!」 赤い傘で暴れるのは、加藤。 「何言ってんだよ虎〜。俺の傘だよねー秀頼様?」 緑の傘で迫るのは、福島。 「あかんわぁ市松。僕の傘が一番大きくてキレイやんなぁ、おいで秀頼様*」 青の傘で笑うのは、小西。 「…おい、どうすんだこの状況」 そして未だ紺色の傘を開けない俺と、傘のない秀頼。 隣を見れば、この状況の要因のひとつとも言える秀頼は、嬉しそうに笑っていた。 「皆さん!」 秀頼の一言に、ケンカ寸前だった5人が止まる。 「皆さんそれぞれ交代で、私を傘に入れて下さい。それで帰りましょう」 『はいっ!秀頼様!!』 まさに鶴の一声。秀頼は大谷の傘に入り、次は石田さんです。と声をかけながら雨粒の世界へ降り立った。 「では、また明日。信忠くん!」 「え、あ、…おう」 幸せそうな秀頼の笑顔が太陽みたいに輝いて見えた。 「…愛されてるって、やつか…」 苦笑いに溜め息ひとつ。 そこで俺はやっと、自分の傘を開いたのだった。 終 提供元:rim/保様 *** 子飼に愛されまくってる秀頼様って良いよね!と言う話(笑) 20080622 [前へ][次へ] |