出雲探偵記 “六花の導き人” ーーーーーフランス、パリ。 日本から遠く離れたこの地に今、“彼”はいた。 『…彼女はあの時間に、この場所へ来ていたんです。犯人に呼び出されて。そして、何も疑うことなく此処へ来て、彼女は殺された…』 彼は言う。 『は、犯人は…?』 『クス…指紋は全て拭き取ったつもりだったのでしょうが、僅かに見逃してしまったようですね…ある場所から犯人の指紋が出てきました。』 口元に妖しげな笑みを浮かべながら。 『結局犯人は誰なんだよ!?』 『…出てきた指紋は、奥様、アナタのものでしたよ。』 追いつめた… 『知っていたんでしょう?旦那様が彼女と不倫関係にあったことを。旦那様だけに身を捧げてきたアナタは、それを許すことができなかった…そうですよね?』 確信を持ち、言葉を紡ぐ。 『彼女、それから旦那様。二人のことを知っていた方々…奥様、アナタは彼らよりも遥かに赦されぬことをしてしまった…』 …その瞳には。 『どんな理由があろうと、生命を奪うことは決して赦されない。どれほどの“チカラ”を持つ者でも!!』 弱まることを知らない、激しい怒りが写っていた。 彼の名は… 『弥国殿、今回も事件解決に御協力していただき、まことに感謝しております』 『いえ。僕はただ、被害者の“声”を聞いただけですので』 『ハハハ…どころで、随分と大きな荷物のようですが…今度はどちらへ?』 『呼び出されたわけではないのですが…少し、家族が恋しくなりまして。しばらく向こうで生活しようかな、と。』 『里帰り、ですか。貴方がいなくなってしまったら、また事件が増えそうですな』 『そこはあなた方におまかせしますよ。そのためにいらっしゃるのですから』 『ハハッ。そうですな。…おや、そろそろ時間のようだね…では、お気をつけて…“六花の導き人”殿』 『…その名はやめてくださいって言っているじゃないですか…』 出雲 弥国、18歳、高校3年生。 職業、探偵。 通称、六花の導き人。 日本、帰国。 [*前へ][次へ#] [戻る] |