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迎え人‐3
 男は困って頭を掻いた。
 当主の代も変わった。ならばその補佐役とて、いずれ代替をしなければならないだろう。正直、男の郷と「桂丸」の郷の間には同盟や誓約の類は一切無い。当主同士の個人的な知人、という程度の関係なのだ。
 官領の倅と会わせろという要望を押し通せる立場ではないのだ。
 引き下がりはしたものの、それでも未練がましく桂丸を伺うが、当主の答えはにべもない。
「現状、桂丸の家宰は裄邑様を筆頭に経験豊富な精鋭たちがそろっております。そこにあのように若い者を加える必要はありません。――裄邑様にはお会いになったか?」
 男は内心嘆息した。これを機に郷付き合いを、と思っていたのだが、よくよく考えれば、桂丸としては弟の隠匿場所は知られない方が良いに決まっている。公的な交流が無い方が良いのだ。肩を落とした。
「はい。鎬把殿とは丁度入れ替わりになったようでしたので、奥方様にもご挨拶を」
 座敷にはまだ先代縁の者が多くいる。彼等に見付からぬようにと、お互い密やかに初見を済ませた。
 どこか開いているのか、足音以外に梢の音が聴こえる。会話が途切れてしまったので、男はその音に耳をすませた。
 しかしそれも長くは続かず、角を曲がると裏口に到着する。屋敷の規模からすれば、いっそみすぼらしい裏口だった。

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