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襲名‐3
「このような子供に『桂丸』を任せねばならないなど私は認めることは出来ぬし、篁夜連の方々も一笑に付すことだろう。―――この度は翁衆を始め上役方々のご同意を得、こうして『桂丸』を襲名できましたこと、この隆茉、誠に嬉しゅうございます。またこれを機に我が弟、尉濂を見知りおき下さいますよう、お願い申し上げます」
 これを合図に、女が解散を宣言した。



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 襲名の儀が済むと、骸の身内の他、僅かな者を残して一時解散となった。
 その際片付けやら棺の移動やらで駆りだされていた鎬把は、空きっ腹を抱えながら次々と部屋を素通りしていく。
 座敷に残った者たちは既に昼餉を済ませてあるらしく、駆りだされた若衆たちには順次別室でとるようにとの事だった。
 最後まで手伝わされていた鎬把は勝手知ったる他人の家と、部屋までの道筋を省略していたのだ。
 中庭を突っ切って面屋に向かおうと障子に手をかけた時だった。話声に思わず手を止め、僅かに開けた隙間から覗き見る。
 庭の隅で話し込んでいる二つの姿。赤毛の後ろ姿と、狩衣姿の菫髪。鎬把は眉をひそめ、静かに障子を閉じて踵を返した。
「…………」
 施主と葬儀を執り仕切った神官が話をしていようと不思議ではないが、こんな人目の無いところで、という思いがあった。鎬把は淋しげに鳴った腹を抱えて廊下を進む。
 遅い昼を済ませれば、社送りだ。

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