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甘いものの食べ過ぎには注意/新八+


 戸棚を開けると、そこはお菓子の国だった。


◆◇◆◇


「神楽ちゃん」
 新八が声をかけると、沖田と睨み合っていた少女はパッと振り返った。
 構えを解いた沖田に挨拶した新八は丁度良かったと両手に下げた袋を神楽に差し出す。
「何アルか?チョコ?」
 袋から覗いた板チョコを早速開封し口に突っ込む。そんな神楽に苦笑した新八は暫らく万事屋には行かない旨を告げた。
「んん!?」
「神楽ちゃんも何かあったらウチに来て良いからね。あ、ただし米は持ってきてよ」
 ポッキーを銜えた沖田が何かあるのかと尋ねてくるが、新八はそれには答えなかった。
 沖田をじっと見つめ、そうか…、と呟く。
「あの沖田さん、ちょっとお願いがあるんですが……」
「?」
 新八の「お願い」に神楽はんまい棒を喉に詰まらせた。


◇◆◇◆


「と言うわけで、我が義弟新八くんが俺の後を継ぐべく真選組に入隊することと相なった!皆!仲良くするように!!」
 場所は真選組屯所の大広間。隊士を集めたそこで、近藤は隣に立たせた少年の肩をガシリと抱いた。
「……って、ちょっと待って下さいよ近藤さん!僕の話聞いてました!?」
 その手を振り払い、新八は猛然と抗議する。
 銀時の自堕落っぷりに、最早あの天パが糖尿で死のうがどうでもよくなって勢いで万事屋を出てはみたものの、稼がなければ(万事屋からの収入など微細だったが)姉に殺されるのは自分である。そこで偶々会った沖田に一時的にバイトさせてくれないかと話を持ち込んだ。
 当然新八は雑用のつもりでいた。
 しかしあれよあれよと言う間に隊長格の制服を着せられ局長補佐などという新たな役職を設けられてしまった。土方も難しい顔をしていたが、今は何より沖田の射抜かんばかりの視線が恐ろしい。
「大丈夫だ!君の事は何があってもこの義兄が護ってやるからな!」
「いやいやいやいや」
 寧ろアンタのせいで今正に危険な状態なんですけど。
「土方さんも何とか言って下さいよ。僕はさっきの条件さえ呑んでくれれば下働きとかでいいんです」
 ゴリラの暴走を止めるにはフォローの達人に頼るに限る。しかし土方は諦めろと首を振るのだ。
「小姓だと思っときゃ良いんだよ」
 既に近藤との攻防に敗れた後なので土方の声にも力がない。一時的なバイトという事で漸く折れたのだった。
「そんな……」
「新八君!2人で真選組を盛り立てていこうではないか!!」
 高らかに笑う近藤とは対照的に新八の表情は冴えない。こんな事が姉に知られればと考えるだに恐ろしい。


◇◆◇◆


 真選組局長補佐と言ってもやることと言えばお茶を出したり「今日の志村妙」を聞かせたりと新八は実に平穏な日々を過ごしていた。土方が断固として長の持つあらゆる権限を赦さなかったのが大きい。この10日余りで総手の出動が3回あったが、新八は全て留守番だった。
「46条の延長だっつーことだろ」
 最初こそ嬲り殺す気でいた沖田も補佐の実情を見て途端に興味が失せたらしい。
 それでも新八には有難かった。その最たるものが稽古への参加である。
 今も若い隊士と打ち合っていた所へ、突然とんでもない破壊音が響き渡った。
 攘夷浪士か!?との声が飛び交う中、道場に飛込んで来たのは新八には馴染みの顔だった。
「新八ィィィィィ!!」
 銀時は隊士達を蹴散らし突進してきたかと思うと、新八の目の前で土下座したのだ。
「俺が悪かった!!もうお前の許可無く甘味は食わねえ!だから帰って来てくれ!もう神楽の卵かけられご飯は沢山なんだ!!」
 そこへ憮然としながら神楽も現れる。
「銀さん……」
 優しい声に顔を上げた銀時だったが、次の言葉に捨てないでくれと新八にすがりつくハメになった。
「時給2千円がアンタに出せるんですか?」

退却だ!突撃!

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