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衝撃から守ろうと頭をかばった新八だったが、音はすれども一向に何も起きない。そろそろと目を開けると、車との間に立ち塞がる2つの姿。
神楽と阿伏兎が傘で防いだのだ。
「ってめえコラ、サド野郎!! 何てことするアルか!」
激昂する神楽に、車から降りてきた沖田は真面目に仕事してるんだろうがとにべもない。
沖田はするりと視線を滑らせる。神楽の横には鬱陶し気に土埃を払う夜兎の男。その背後に騒ぎにも微動だにしなかった夜兎その2。眼鏡とペンギンおばけ、万事屋は桂と言い合いをしている。
この人数に夜兎が3人もいてはは流石に自分一人では無理だろう。
「あ〜あ、何かもう面倒臭くなっちゃったな」
唐突に、そんな声が上がった。
手前にいた夜兎の2人がはっと振り返る。
「神楽お前、いっつもこんなことしてるの? 公僕なんてさっさとぶち殺しちゃえばいいだろ」
傘の陰に隠れていた夜兎の目がキラリと光る。沖田は息を呑んだ。
――来る
阿伏兎は慌てて沖田と神威の間に割り込んだ。
「団長〜、今日は大人しくしてくれって言っただろぉ。こんな所で勘弁してくれよ」
ほら、と阿伏兎は神威の背後を指差す。
「あんたの目当てはあっちだろ?」
促され、神威は振り返る。
丁度桂に鼻フックをかけられていた銀時の非常に残念な姿がそこにあった。
「――旦那、何です?こいつら」
「……私のクソ兄貴アル」
ぺっと唾を吐いて神楽が答えた。
成程、と思う。と云うことは星海坊主の息子という訳だ。目の前に桂が居ると言うのに、これでは迂濶に手が出せない。
「おっかない事を言いやすねお兄さん。ぶち殺すだなんて……俺は桂さえ捕まえられりゃあそれで良いんでさぁ。―――退けや」
神威は拒否した。
「桂さんとはこれから仲良くしようと思ってるんだ。捕まえられるのは困る」
傘を少し傾けやや半身を退げる。
阿伏兎の制止も聞いていないだろう。
そんな神威の背後では銀時が怪訝そうにしていた。
「ふ…、見たか銀時、これが人徳と云うものだ」
「つーか、この騒動は全部てめえのせいじゃねーか!」
まずいですよと、新八も2人の会話に加わる。沖田が危ない。
しかし沖田と神威がぶつかる事はなかった。阿伏兎が神威を肩に担いで走り出したのだ。
万事屋!と叫ばれ、銀時は桂の腕を掴む。
「じゃあそういう訳だから、総一郎君」
それだけ言うと銀時らも脱兎の如く逃走した。
☆☆☆☆☆☆☆
「お前はよ―!俺ら善良な市民を巻き込んでんじゃねぇよヅラぁ!!」
「ヅラじゃない、桂だ。大体貴様の何処が善良なのだ。頭の天辺から爪先まで糖分まみれじゃないか。糖尿を善良とは言わん」
「何だとコノヤロー!糖を摂取して何が悪いんだ!あ?」
「まぁ、神楽ちゃんのお兄さんなんですか。いつも妹さんのことお世話してますぅ。あ、ドンペリ良いですか?」
「……銀時、だからお前はもてないんだ」
「だからの意味が分かんねぇよ!!」
「阿伏兎さん渋いですねぇ。ワイルドで素敵ですよ」
「姉御、あんま気を許しちゃダメアル。コイツら悪役ネ。――おかわりぃぃ!」
「さ、桂さんもどうぞ」
「あぁ、かたじけない」
ここでようやく新八がちょっと――!と絶叫した。
「新ちゃん、煩いわよ」
「すみません姉上、って違いますよ!ちょっと銀さん!なんでこんなとこ来てんですか。もう万事屋に帰りましょうよ。僕も神楽ちゃんも、神楽ちゃんのお兄さんだってまだ未成年なんですからね!」
真選組が本格的に追って来るものだから一時身を隠す事にしたのは良い。しかしだからって「すまいる」は無いだろう。
「うるせえなぁ。新八ぃ、お前もう吉原経験済みだろ?キャバクラの一つや二つでわめくなや」
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