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「やっぱり変ヨ」

 風呂から上がってきた神楽は開口一番にそう言った。銀時と新八は忙しく金勘定をしている。
 「すまいる」での思わぬ出費(夜兎兄妹の凶悪胃袋と調子にのって追加注文したドンペリ)の為に、前金はすっかり消えてしまったのだ。お登勢に家賃を払いに行けば、これまでの滞納分と来月分までぶん取られ、残ったのはひぃふぅみぃと計算していたのだ。

「新ちゃ〜ん。金も入った事だすぃ、明日はパフェ祭して良いかな良いよね良いに決まってんじゃん!やべぇよ、銀さん前から1度パフェを腹一杯食ってみたかったんだよねぇ」

「何言ってんですか糖尿寸前のくせに。当座の生活費と僕らの給料分以外は貯金に決まってんでしょ」

「新八様!そこをどうか!」

「あーもう、うるさいなあ。だいたいアンタ酒臭いんだよ!もっかい酔いを醒ましに行って来て下さいよ。これじゃ話も出来ない」

「おい、聞いてるアルか」

「もう酔ってねぇよ。ババアの面見たら酔いなんて醒めたってばぁぁ」

「重いです銀さん。ちょっと神楽ちゃん、この天パ何とかしてよ」

 完全に出来上がっているマダオを蹴り落として新八の横に納まると、神楽はテーブルに広げられている札束から1枚手に取って明かりに透かしてみる。

「……本物アル」

「いってーなクソガキ!何だぁ?反抗期ですかコノヤロー!」

 ちょっと、と新八は動揺する。マダオは無視だ。

「偽札な訳ないじゃないか。神楽ちゃん怖いことしないでよ」

 でも、と神楽は口を尖らせる。「おい聞いてる?」と喚く駄目な大人はスルー。
 結局街をぶらついただけで(その半分近くがすまいるだったが)神威にしてみれば得たものなど無い筈だ。

「案外神楽ちゃんに会いに来ただけかもしれないよ?」

「はっ、無いアル」

 容赦無い一蹴に新八は苦く笑った。
 しかし確かに彼らの目的が不明瞭なのは気に掛る。「侍を見に来た」と言えばそれまでだが、わざわざ大金を提げて来る意味が分からない。

「あれで暇潰しになったとも思えないしなぁ」

「敵情視察だったかもしれないネ。金で釣って油断させる作戦アル!」

 どうしよう銀ちゃん、と床に転がった天パを見れば、だらしない顔で鼻をほじっている。

「つーかよぉ、貰っちゃったモンはしょーがねぇだろ。そーいう作戦だったとしても、今頃気付いたってどーしようもねぇって」

 どっこいしょーいち、と起き上がり、銀時は若者2人の向かいに腰を下ろした。

「侍見学って事でいいじゃん。よしんば何か企んでたとしても、またぶっ飛ばせばいーんだよ。ったくよぉ、ごちゃごちゃとメンドクセーなぁ」

 神楽と新八は顔を見合わせる。

「つー事で新八ぃ、明日はパフェ祭な!」

 風呂入って来ると言って出ていった銀時の背中を見送った新八は、溜め息をついて現金を片付け始めた。隣でそれを眺めながら神楽は言う。

「銀ちゃんて、時々カッケーアルな」

「…まぁ、時々ね」

 仕方ないから明日のパフェは3つまでなら許してやろう。
 新八は取り分けておいた現金を封筒に入れて神楽に渡した。自分も一つ取って懐にしまう。

「? 何アルか?」

「お給料だよ。本当はこういうの銀さんが渡すんだけどね。ちゃんと計画たてて使うんだよ」

 神楽はぱっと顔を綻ばせた。

「給料!初めてアル!! 新八、ありガトウ!」

「銀さんにもお礼言ってね」

 風呂場に向かって銀ちゃんアリガトー!と叫ぶ神楽に、お兄さんのお陰だねと言うと、神楽は怖い顔で振り返った。

「………………。今回は、許してやるアル……」

 また来たらぶっ飛ばす!と息巻いて、神楽は拳を握った。

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あきゅろす。
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