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諒闇の間
――――カツン、カツン


月明かりさす、諒闇の間に
アルティナの足音がだけが響く

この部屋は皇帝との謁見を認められた者だけが入ることを許される
この国の闇の間。過去にどれだけ汚い契約が此処で結ばれた事か


その広間の奥に彼は鎮座していた
彼の名はユグドラシエル王国皇帝
フルニグル・ヴァインシュタイン


「お呼びでしょうか、皇帝陛下」

「…素直にくるとは…な。
素直にくるなら手荒な真似をする必要は無かったなようだ
…すまなかったな」

「いえ。」

「…相変わらず私が嫌いな様だな」

「嫌っているなど…
とんでもございません…陛下
ただ、私は皇帝陛下をお慕いしていないだけでございます。」

「フッ。素直なことだ」

「お褒めに与り光栄でございます
して…私にご用とは?」

「新人の歓迎会は…
何かと大変だったようだな?」

僅かにアルの眉間に皺が寄る

「よくご存じで」

「枢密院とその飼い狗はよく働く
色々と教えてくれるのだよ」

「…四大貴族との折り合いの事でしたら…陛下がご心配なさらずとも宜しいかと。我々、四華騎士団はこういった揉め事の対処には慣れておりますので」


目の前の人物が枢密院を使いよく<揉め事>を持ち込んでいるのだ
慣れなければ何かと言い掛かりを
付けられ騎士団は潰される


「フフ…頼もしいな
だが…私が追求したいのはそこではない。アルティナ、お前の事だ」
「何か…私めに問題でも?」
「婚約だよ。
お前とていつまでも独り身で
いるつもりでは無かろう?」
「陛下、お話されている意味が
皆目見当が付きません
何故、この場に私の婚約話が出てくるのです?
これ以上戯言を仰る様なら
私は部屋に戻らせて頂きます」

「そう怒るな
突拍子の無い話ではあるまい?
決闘によりお前の評判が更に
広まっているはず…
お前の元に婚約の話がいくのは時間の問題だ
剣を取ったといえ、お前は女
いつか婚礼の契りを結ばねばなるまい…そこでだ――」

「私はっ…!!」

声を荒げアルは皇帝の言葉を遮る

「剣を取り、女として生きる道を捨てた身。よもや、誰かの元に嫁ぐなど…戯言です。
私は剣と共に在り、死ぬのです
お心使い感謝しますが…
お断わりいたします」

「…フム…だがすでにこちらに来ている縁談の話はどうする?
ほっておく訳にはいくまい?
縁談の話を知らなかったのか?
…その反応だと寝耳に水の様だ

そこでだ…近々、同盟国同士での
舞踏会があるであろう?
我とて一方的に意見を
押しつける事はせん。
その舞踏会にお前が出席すれば
我から縁談の話を
無かったことにしてやろう」

「取引…否、脅迫ですか?
舞踏会に何があります?」

「なにもありはせんよ。
ただ舞踏会に出ればいいだけの話
無論、一人でも構わん…どうだ?」

「……分かりました。
出席いたしましょう
くれぐれも…約束は違えることの
無いようにお願い致します
では…失礼いたします」

「あぁ」


一礼し、何かを振り払うように
ローブを翻し、諒闇の間を去る
その顔は穏やかとは言えなかった





向き合わなければならぬモノ
行く手を阻むのは人だけではない




2008.11.30

久しぶり&長い…すんませんっ!!



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あきゅろす。
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