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王は孤独、神の奴隷と賢者は言う
「団長!!は、や、くしてくださいぃ!
軍議に30分も遅刻してますっ!!
走ってください!!
走れ!!走るんだ!!レオリアっ!!」
「ふわぁ〜…パニくり過ぎ
変だよ、シーリーン」
「誰の所為ですかっ!?誰の!?
仕方有りませんね…
こうなったらケーキ道具取り上げっていない!!」

廊下の向こうには走り去る菖蒲の騎士団長の後ろ姿

「…走れんじゃん……」

大きな溜息をつき彼女も走りだす



「あ。揃った?」

王…オルフェウス・ヴァインシュタインは書類から顔を上げる

「はい。
クロスフィールド騎士団長が
やっと来られました」
「まぁ…定例軍議だからね
そんなに焦らなくても良いよ
それより大丈夫?シーリーン」
「ぜぇ…お気に…なさらず…」
「そう?なら軍議を始めようか?」

「「「「王がそれを望むなら」」」」

若き王は蒼い目を細めた
彼が見せる本物に近い笑顔
王の仮面を彼らの前で外す程
騎士団を信用しているのだ
王は常に孤独である
信頼のおける者達に支えられなければ王は狂気に堕ちる
他国の賢者の言葉だ
そういった面では
先代の王より彼は人望が暑い
信頼を与え、功績で返させる術を
彼は熟知しているからだ


「特に問題は無いね…
じゃぁお開きにしようか?
何かあったら召集させて貰うよ」

報告書にざっと目を通した彼は皆に告げた


「「「「王がそれを望むなら」」」」


一人また一人と退室していく
残るはオルフェウス、アルティナ、そしてレオリアのみとなった
暫しの沈黙
王が書類を捲る音が部屋に響く
沈黙を破ったのはアルティナ


「オルフェウス。いい加減、休め
ひどい顔をしている」

「…………………」

オルフェウスは答えない

「オルフェ…?」

アルが訝しげに
彼の名を呼ぶが反応が無い
ただ書類をめくるだけだ

「はぁ…」

レオリアは溜息を吐き、
オルフェに歩み寄り
思いっきり耳元で怒鳴る

「オルフェウス!!!!!!」
「うわぁっ!!!!」
「うわぁっじゃないよ。馬鹿
こんなにぼーっとするんぐらい
疲れてんなら休め、馬鹿」
「…馬鹿馬鹿、言うなよ……」
「馬鹿に馬鹿って言って何が悪い?
ぶっ倒れたらどうすんのさ
書類は置いといて
その酷い顔をなんとかしなよ」
「…そんなに酷い顔してるか…?」
「あぁ。ひどいぞ
全く…私には休め、無理をするな
と言う癖に自分の事には
無関心だからな…お前は

そんな顔で軍議なんか開くから
いつ倒れるか気が
気じゃなかったんだぞ」
「…二人してそんな心配するなよ…
俺は、大丈――」
「「じゃぁないよな?」」
「う…は…はい…」


オルフェウスはつくづく思う
この二人に隠し事は出来ない
先程の軍議だって顔をあまり見られないように心がけていたのだ
現に他の者には気付かれていない
否、この二人以外の騎士団長には
悟られていたかもしれないが

だがこの二人以外、王にここまで言える者はいない
昔からの友である彼ら、しか。絶対の信頼を置かれている彼らしか


「つべこべ言わずに寝ろ。
まったく…人が気をつかって
軍議に遅刻したってのにさ…
なに、死にそうな顔で
書類と睨み合ってんだよ
そん時ぐらい休め」

「ほぉ…お前の遅刻は
寝坊以外無いと思っていたよ
オルフェ、そんなに根を詰めても
お前の体調が悪くなるだけだ」

「うるさいよ、アルティナ
オルフェ…いい加減自覚しろよ。
お前は王で。一人だけの体じゃないって事をさ」

これぐらい言わなければ
頑固な彼は動かない。
幼い頃も三人の中で
一番頑固だったのだから


「はぁ…分かった。分かったよ
二、三時間寝る。これでいいか?」

「あぁ。足りない気がするが
寝ないよりマシだ」

「やっとその気になったか
にしても、その書類って何?
睨み付けてたけど」

「ん?枢密院からの意見書だよ
予算がどーのとか、騎士団の活動がどーのとか煩いんだ」

「決闘、のことか…?それじゃ私の所に来るはずの物なんじゃ…」

肩代わりをさせたのでは
とアルは青くなる

「違うよ。アルに文句を言ってるんじゃないよ、あの狸ジジィ共は
悔しいんだよ。送り込んだ逸材が滅多打ちにされんだから
だからただの八つ当たり」

「枢密院か…潰すか…」

「やめてくれ…レオ。
お前なら本当にやりそうで怖い」

「俺もレオの案に賛成だなぁ」

「オルまで!?…勘弁してくれ…」

「クッククク…クックククク」

「プッ…アハハハハハ!!
冗談だよ。そんなに本気にしなくても…ハッハハハハハ」

「二人して、わっ笑うな!!」

真っ赤になっているアルを宥めて
オルフェは椅子から立ち上がる

「ごめん、ごめん。
ほら、俺を休ませるんだろ?
早く自室に戻らせてよ」
「はぁ?お前、護衛は?」

笑いを堪えながらレオが聞く
片手はこれ以上、アルが掴み掛かって来ないよう、頭を押えている

「先に帰した。二人がいるから大丈夫だって言って」
「はぁ…面倒臭いな…」
「休めって言ったのは二人だろ?
ほら、早く行こ」
「だってさ…行くよ、アル」
「いい加減、手をどけろ!!
背が縮む!!」


オルフェウスが浮かべる笑みは
間違いなく本物であった






些細な会話も堪らなく嬉しいんだ
(今度さ…三人で飲もうよ)
(…まぁ…いいかもね
でもコイツ飲めないよ)
(馬鹿にするな!
前より一口多く飲める!!)
(…変わらないよ…それ)
(アハッ…アハッハハハハハハ)




2008.10.13
補足…アルの口調がいつもと違うのは二人の前だからです
親しい仲だからこそ、こうなんです



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あきゅろす。
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