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上に立つ者
目が覚めると医務室だった
心配そうに見つめる従者
それでやっと解った

「……ま…けた…のか………」

呟くと従者が頷く
途端にソヌンはかっと目を見開き寝台から飛び起きた、はずだったが腹部に痛みが走る

「痛っ……!!」

「ソヌン!!まだ動いちゃ駄目です
貴方が倒れてからそんなに経ってないんですから!」

「離せ…もう一度アイツに…!!」

「だから駄目ですってば
まだ寝ててください!!」

「うるせぇ!!!このまま負けたままでいられるか!!」

「…だ、か、ら…駄目って言ってるだろうがぁ!!!!」

「がはっ…!!!!」

従者が主の鳩尾を殴った
しかもかなりの力で
ソヌンは予期せぬ攻撃の痛みに声が出ない

「っ…!!…っ…!!!」

「おとなしく寝ててください。また副騎士団長にお世話になってしまうだろうが」

口調がおかしくなっている
それだけ怒っているのだろう

「説教しがてら様子を見に来たんだけど…その様子だと大丈夫そうだね」

医務室の開けられたドアに寄り掛かるように一人の男が立っていた

「はぁ?おま――」

「ローレル副騎士団長!!」

ソヌンの言葉を遮り従者が叫ぶ

「なっ!!副騎士団って―ぶっ!!」

主の頭を押さえ付けお辞儀をさせる。そうまさに母親が子にするように

「先程は馬鹿主が大変っ!お世話になりました!!後程改めてお詫びをしに行かせて頂きます」

「別にいいよ。
気絶で済んだけ楽だったからね」

「ですが…――」

「おい…楽だったってどういう意味だよ」

「そのままの意味さ
流血沙汰になると後処理が面倒だからね。騎士団長が気絶で済ませてくれて本当によかったよ」

「…じゃぁなんだ…?
後処理が面倒だから気絶ですませたってか…!?
ふざけんなっ!!決闘を何だと思ってんだ!!!」

「ソヌン!!!!」

「そういう意味じゃない
勘違いしてるようだから言うけど、騎士団長は君を格下と見下してた訳じゃない。僕の言い方が気に障ったなら謝るよ」

「謝るかの問題じゃねぇんだよ!!
何でアイツが気絶で済ませたかが聞きてぇんだよ!!」

ローレルは呆れたように俺を見るとため息をつく
俺が何か言おうとした瞬間殺気がローレルから噴き出す

「…くっ……」

「君ごときにあの人が本気を出すとでも?自惚れるな
教えてやろうか?
何で気絶で済まされたか
本気の騎士団長を前にしたら君ごときじゃこの世にいられないからさ
だから気絶ですました
いや、済まされた
まだ自分があの人に勝てるとか
馬鹿なこと思ってるんじゃないだろうね?剣を交えて解らなかったの?
あの人は優しいから酷く言わなかったけど言わせてもらうよ

力不足なんだよ、君じゃ
そんな馬鹿の一つ覚えみたいに
あの人に掴み掛かっていっても一生あの人は越えられない、絶対に
逸材だかなんだか知らないけど
そんなんで上に立てるほど易しくない。君とは背負ってるものが違うんだよ」

「……………」

部屋に響くのはヴァイツの声のみ

「まさか逸材がこんな自惚れ野郎だったとはね。決闘を許可した僕が馬鹿だった。紹介状だったら僕が喜んで書くよ」

従者に何かを告げるとヴァイツは部屋を出ていった

しばらくして従者が口を開く

「何かあれば呼んでください
隣の部屋に居ます」

従者が言った言葉は耳を通り抜け、ドアが閉まる音だけが耳に響いた


「…っ…くそぉ…!!!」

彼は俯いたままシーツをおもいっきり握り締めた




落とされて空の高さを知る
(立ち上がるために、ただ泣き続ける)

2008.9/29



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あきゅろす。
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