[通常モード] [URL送信]

【BL】『喫茶店。』シリーズ


「んー!ピーク過ぎたね!」

 お昼まで寝る?
 と、テーブルを綺麗に拭いていくナルに、

「そうだな、ちょっと眠ぃな」
「だったら夜の仕込みはわたしがしておくね!」
「おう、よろしく」


 マスターは手を洗うとエプロンを脱ぎながらそれで手を拭き、

「2時間したら呼べよ」

 部屋の奥へ上がっていった。



       ◇



 マスターは2階に上がると、

「天気いいねぇ」

 引き窓を開け放ち、サンの上に腰を下ろした。

 そこから青空を仰ぎながら、ポケットから取り出したタバコを口にくわえた。

「結局アンタは何をしたかったんだろうねぇ」

 そう呟きながら、マスターは2週間前のことを思い出した。




『どうしよマスター……』
『あ?』
『アイツ……結婚する』
『へぇ、女?』
『……トモダチ』
『ふーん』
『ずっと好きで、でも、だめだな』
『そうなん』
『絶対好きになっちゃだめなんだよ。ずっと大事に想いをしまって、傍に居続けたのに』
『実は悔しい?』
『……だな、アイツ、ホント鈍いから』
『で、だからどうだってんの?』
『……解んねえ、でも、我慢できないのは確か』
『……』
『この先仲睦まじく一緒に住んで、子供できて、幸せな姿。一生見続けるのかと思ったら……正直、俺、』






 それはある常連客とのやり取り。

 マスターはそれを思い出しながら、ゆっくりタバコを吸っては吐いていく。


「もう、気は済んだだろ……許してやりな」

 誰に向かってなのか……。

 でも確かにそれは切実な想いで、

「後悔してるから、俺のトコに呼んだ?ガラにもなくちょっとビビったっての」

 尽きることなく、それは縛られたまま最悪な結末を。

 けれど……、

「まぁ大丈夫だろ」

 マスターは思いっきり背伸びをすると、タバコを携帯灰皿に押潰すように入れて、蓋をした。

 そしてもう一度見上げた空は、

「アンタが惚れた奴なら……な」


 どこまでも澄み渡っていた。

[*前へ][次へ#]

7/8ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!