【BL】『喫茶店。』シリーズ 6 「んー!ピーク過ぎたね!」 お昼まで寝る? と、テーブルを綺麗に拭いていくナルに、 「そうだな、ちょっと眠ぃな」 「だったら夜の仕込みはわたしがしておくね!」 「おう、よろしく」 マスターは手を洗うとエプロンを脱ぎながらそれで手を拭き、 「2時間したら呼べよ」 部屋の奥へ上がっていった。 ◇ マスターは2階に上がると、 「天気いいねぇ」 引き窓を開け放ち、サンの上に腰を下ろした。 そこから青空を仰ぎながら、ポケットから取り出したタバコを口にくわえた。 「結局アンタは何をしたかったんだろうねぇ」 そう呟きながら、マスターは2週間前のことを思い出した。 『どうしよマスター……』 『あ?』 『アイツ……結婚する』 『へぇ、女?』 『……トモダチ』 『ふーん』 『ずっと好きで、でも、だめだな』 『そうなん』 『絶対好きになっちゃだめなんだよ。ずっと大事に想いをしまって、傍に居続けたのに』 『実は悔しい?』 『……だな、アイツ、ホント鈍いから』 『で、だからどうだってんの?』 『……解んねえ、でも、我慢できないのは確か』 『……』 『この先仲睦まじく一緒に住んで、子供できて、幸せな姿。一生見続けるのかと思ったら……正直、俺、』 それはある常連客とのやり取り。 マスターはそれを思い出しながら、ゆっくりタバコを吸っては吐いていく。 「もう、気は済んだだろ……許してやりな」 誰に向かってなのか……。 でも確かにそれは切実な想いで、 「後悔してるから、俺のトコに呼んだ?ガラにもなくちょっとビビったっての」 尽きることなく、それは縛られたまま最悪な結末を。 けれど……、 「まぁ大丈夫だろ」 マスターは思いっきり背伸びをすると、タバコを携帯灰皿に押潰すように入れて、蓋をした。 そしてもう一度見上げた空は、 「アンタが惚れた奴なら……な」 どこまでも澄み渡っていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |