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【BL】『喫茶店。』シリーズ
9 少時。


「あー!!もうムリ!!疲れた!!」
「だらしがないな。力は強いが持久力が無いな」

関係ないだろ!!
と、喚きながらもおっきなスクリーンの向こうで、

「来たぞ」
「だぁぁもう!?どんだけ続くんだよコレっ!!」

ゾンビが次々現れる。

俺とお兄さんはさっきから溢れ出てくる、ゾンビというゾンビを打ちまくるゲームをやっている。

もうかれこれ1時間近く……。

お金はそんなに使ってないけど、負けず嫌いな性分なのか、お兄さんがゲームオーバーになっても直ぐ100円入れるんだもんな。

俺もうきついからライフライン無くなった時点でやめるっつってんだけど、

「あぁぁもう死んだから俺抜ける!!」
「ダメだ。2人の方が効率いい」
「だったら1人で2丁使えよ!!」
「俺はこのフォームしか撃てない」

左手に銃を握り、右手を柄の下に添え、少し体を傾けた構え。

滅多に使わないんだろうけど、やっぱ本職だけあって、さまになってる。

カッコいい。


それを眺めていたいのもあるんだけど……。

もうギャラリーがすっごいたむろってる。

だってスーツ着た堅物っぽいメガネが、表情ひとつ変えずスクリーンに向かって打ち続けてるんだ。

ヤロー共は感嘆を上げ、女の子たちは色めきたってる。

くっそー……、なんか悔しい。

「おっし!!次のボスは俺がトドメさす!!」
「そうはさせるか」
「さっきからオイシイとこばっか持ってってるだろ!!譲れよ大人げねぇな!!」
「勝負は常に真剣だ」
「アンタのはただの負けず嫌いだ!!」

そういう俺も負けず嫌いだなってのはこの際気づかないフリをして、

「次負けたら勝った方の言うことをひとつ聞くってのはどうだ?」
「臨むとこだインテリメガネ!!」

俺は片手で銃で撃ちまくりながら空いてる手で、お兄さんに向かって指差し言い放った。

お兄さんは何が可笑しいのか大笑いして、また直ぐ撃つのに集中した。

「あ〜あ!結局俺の方が少なかった」

俺はゲーセン内のベンチに座り込み、ぐったりしながら麻痺しかけている腕をさすった。

結局さらに30分ぐらいやって、やっと全クリ出来たんだけど終わった後も大変だった。

ヤローは遠巻きに女の子たちがもう……、失礼で馴れ馴れしくて、思い出すだけでもキツい……。

最後はお兄さんが半ギレでみんなビビらせて、その場から抜け出した。

「もう死ぬ……」

そうぼやいてベンチに横になってると、

「なかなか悩ましいな」
「ナニ見ていってんだよ……」

お兄さんが飲み物をもって俺の顔を覗きこんでいた。

俺は「近いから」と、肩を掴んで押しのけゆっくり上体を起こした。


「ほら、」
「あ、サンキュー……って、ポカリじゃん!!」
「汗をかいたときはコレの方がいい」
「俺ジンジャーがよかったのに。まぁいいや。ありがと」

俺は差し出されたポカリを受け取って「座れば?」と、俺の右横を掌でポンポン叩いた。

それを見てお兄さんが自分のポカリを飲みながら、横に腰を下ろした。

「まだなんかする?」
「したいが、アキラがもうムリだろ?」
「べつ、カーレーシングならできるけど」
「じゃぁ少し休んだらするぞ」
「へいへい」

俺は苦笑して、ポカリをグッと喉に流し込むと、

「気が済むまで付き合うよ」

そう言ってまたポカリを飲んだ。

どんな話を聞かされるのか気になってはいるけど、

もう少しだけ、

「よし!次も賭けしようよ!」
「臨むところだ」

最後かもしれないこの時間を楽しませて。



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あきゅろす。
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