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短編
幸せな檻(シャマル)

愛しているなんて囁かないで…

貴方の愛は女性に対して平等なのだから、

愛しているなんて囁かれたら、勘違いをしてしまう。

だから愛しているなんて囁かないで…






貴方は起きるといつもいない。
夜だって電話を受け取っては出かけて行ってしまう。
自分に魅力がないせい。わかっているわ。
だけれど私は貴方に私だけ見て欲しいの。
…なんて欲張ってみても彼を止めれない。
貴方なんて愛さなければ良かった。
そう思っても惚れてしまった自分の負けだなんてわかっていたの。

貴方が何処かの女の香水を身に纏って現れる度、私の胸は痛い程に締め付けられて、とても息苦しいの…
貴方がいない夜、寒さに凍えるの
私の虚しさだけがいやに空間を満たしている。

貴方と会えない寂しさは男に抱かれて忘れるの。
男に抱かれながら貴方の事を思っているの。
こんな私のことを貴方は汚いって軽蔑するのかしら?

私は貴方に出会わなきゃ良かった、何て何度後悔したかしら。
でも後悔しても、どっちみち今は変わらない。

嗚呼、今日も貴方は帰って来ない。
私は違う男の元へ行く為靴をはく。
貴方を好きな私を忘れる為に
もう私はこの家に帰って来ないだろう。

「たっだいま〜」

上機嫌で帰ってくる貴方
貴方からは香水の臭いがして来て頭が痛くなる。

「……」

こんなに辛い思いをするならば、私は貴方の元を離れるわ。

今日貴方は現れた。
香水の臭いを漂わして…

「今から少し出かけて来るわ…」

貴方の側にいたくない。
靴をはき終わり立ちあがり貴方の顔を見る。もしかしたら貴方の顔、見るのが最期になるかもしれないから…
ちゃんと顔見れて良かったわ。

「…じゃあ行ってきます。」

もう私は此処で「ただいま」と言うことは無くなるのだろう。
痛い胸の痛みを抱き私は家を出る。
貴方は呑気にヘラヘラしながら行ってらっしゃいと言う。
貴方にはきっと私なんか居なくても、他の女が居るのだから、




「…んっ、はぁ」

どれだけ男に抱かれても貴方のことが忘れられない。貴方はまるで鎖のようね。

あの日から1年が経った。
私はまだ貴方のことを思ってる。
馬鹿な私…そう思いながらふと窓の外を見る。
白衣が見えた。視線が合う。
シャマルだ。

1年も経ったので、貴方はすっかり忘れていると思っていたわ。
凄い不機嫌そうな顔。少しざまあ見なさいなんて思ったのは内緒。
私の住んでいる所はマンションだから、きっと他の女の所を訪ねに来たのね。
私を見て眉をしかめる何てやめて欲しい。
私は偶々このマンションに住んでいただけなのだから。

ふぅ、と溜め息を吐きながら、見なきゃ良かったわって凄く後悔する。貴方をまだ好きだと言っている私の心の気持ちが溢れ出しそうだから。


ピンポーン


インターホンが押された音が響く。

胸が少し期待してしまう。
シャマルかしら?

誰ですか?
質問すると宅急便だと答えた。

嗚呼なんて馬鹿な私
シャマルであったら私は入れることをする筈無いのだから…

少しお待ち下さいと言って扉の鍵を開ける。
扉を開けると其処にはシャマル

急いで閉めるが扉がもう少しで閉まるという所で靴を間に挟まれる。

「……何…しに来たの?」

冷やかしかしら?そう言って笑う。
貴方はどうせこれから女と遊ぶのだから。

「…探した…帰るぞ!」

腕を引っ張る貴方。

「……嫌よ」

貴方は私と目を合わそうとしない。

貴方の元へ行くのは嫌だ
貴方はすぐ浮気をするから
私が傷付くだけだから

不意に首にチクりとした感覚があった。

「…まさか…」

私は深い深い眠りについた。
最後に貴方の傷付いた表情を見つめながら…


目覚めると貴方は私をきつく抱き締めていた。

「…もう…もう二度と居なくなるな」

「……」

少し痩せたように見える貴方

「貴方の浮気癖が治ったならね」

痩せたのが私のせいであったなら良いのに、そう思いながら皮肉を言う。

「……ライラが帰って来ないと気付いた時から誰も抱いてない。抱けなかった。ライラを夢中になって探した。」

少し嬉しかった。

「そう言ってくれてありがとう…」

でも私はもう貴方の側に居ないことを決めたの。

「…でも、ごめんなさい。」

私は断るわ。貴方の側なんて辛いだけだから。

「…好きだ、愛してる」

貴方が私の目を見て言う。
貴方の目は真剣そのもの。

「…っ…ごめんなさい」

目をそらす。
貴方の瞳がそんな私を見つめてる。

「俺のこと、嫌いか?」

「…ええ、嫌いよ。」

「俺の目を見てもう一回、言ってくれ」

目をそらしたままの私にそう言う。
顔を手で挟まれ、嫌でも貴方の目と見つめ合うことになる。

「…俺のこと、嫌いか?」

不安気な貴方。

「………好きよ。」

馬鹿な私。
貴方のもとから離れたら傷付くことなんて無いのに。

きつく抱擁された。

「もう離さない」

それは幸せ過ぎる檻
最初から鎖で繋がれた私は、もうここ無しでは生きられない


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