短編
好きよ…(鮫)
「ゔおぉい!」
ブチッ!
「さっきから煩いんじゃぼけー!」
仕事をまともにこなしてる一般のメイド。
メイドだってたまにはキレたくなる時だってある。
私は完璧主義者では無いが、仕事は大抵こなそうと思う。そう、思うのだ。思うのだが、先程から視線にチラチラ、声がうるさいは、背中にもたれかかって来るはで仕事もまともに出来ない。
この男は私に一体全体何をさせたいのだ。
「やっとコッチを向いたなぁ。」
「お名前とご用件をピーと鳴っても鳴らなくても喋らないで!」
「何だそりぁ、」
「いいから!」
仕事がまだ終わってない。メイドの皆の足手まといにはなりたくない。
メイド長はもう私にとって母同然。そののような大切な存在だ。そんな大切なメイド長を困らせるようなことはしたくない。
あの日から暫く経った。
今日は大切な用事がある。メイドの仕事を休み用意された正装に身を包む。
「あら、やっぱりこの服貴方に似合うわね」
そう言ってメイド長が喜ぶ。
今日はお見合いの日
「ありがとうございます。」
「…では行きましょうか」
捨てられてた私を拾って育てあげてくれたメイド長。私がしてあげれることならなるべくしたい。
たとえ私の思いを潰してでも…
「…さあ、ライラ、自己紹介を…」
「はい。私はライラと申します。宜しくお願いします。」
相手が名乗る。少し有名な金持ちの家の息子のようだ。これは尚更断れない。
断るつもりで来た訳では無いが…自分の運命に腹をくくる。
もうすぐお見合いが終わる。
相手は私のことを気に入ったようだ。
このままこの人と結婚か…
さようなら…私の恋心…
貴方と居れて楽しかったよ、スクアーロ…
バンッ
閉められていた扉がいきなり開き、スクアーロが入ってきた。
「…スクアーロ様…何故このような所に?」
心底不思議そうな顔をしたメイド長が声をかける。
「…ゔおぉい!この見合いは無しだぁ!…来いライラ!」
「……無理よ…」
「……何でだぁ…」
若干睨みをきかせ聞くスクアーロ。
会いに来てくれて嬉しかったよ、スクアーロ。だけどこれは断ってはいけない。大切なメイド長の顔に泥を塗るようなことは出来ない。
本当に嬉しかったよ、スクアーロ。
「私はこの人と結婚することに決めたからです。」
凛とした声でそう言い放つ。
見合いの相手が嬉しそうな顔をする。
「…却下だ!」
「貴方には関係無いことです。退室願います。」
「………」
私の冷たい言葉にスクアーロは沈黙する。
「……好きだ…」
一言ポツリと私の目を見て呟いた。
「…………………ごめんなさい…」
嬉しい反面複雑な気持ちで一杯だった。
スクアーロの目を見て言えなかった。見てしまったら私も好きだと言ってしまいそうだったから…
「………邪魔して悪かった…」
口を開いたかと思えば、彼にしては弱々しい声でこの場を立ち去った。
「…何だったんだ?」
そう見合いの相手が呟いた後、相手はスクアーロの悪口をペラペラと喋り始めた。
「…コホン!すいませんが私達帰らせていただきますわ。このお見合いはなかったという亊で。」
メイド長が口を開き、私の腕を引っ張り二人で退室した。振り返った私の瞳には唖然とした相手の顔が写った。
「…さっきのはどういうことですか?」
「それは貴方が一番わかっていることでしょう?私に気を使っては駄目とあれ程言ったでしょう?さあ、行きなさい。」
そっと背中を押してくれた。
「……………行ってきます…」
私は真っ直ぐに走る。
頼りなさげな背中が見える。
銀色の綺麗な髪が夕日を浴びて赤色に少し染まりつつ、冷たい風にゆられている。
私の気配にも気付かないのか、あと1mの距離になっても反応を示さない。
私は近付き思い切り抱き締める。
「スクアーロ、世界で貴方が一番好きよ!」
固まったスクアーロは自分の体に巻き付いている私の腕をほどき、正面から私を抱き締めた。
強く、優しく。
貴方の性格に似た抱擁だった
「…見合いはどうしたぁ」
「…断ってきた。」
「……もう見合いなんかすんなよお!」
「しないよ。…愛してるよ、スクアーロ」
「嗚呼…俺もだ」
二人は夕日に照らされながら永遠の愛を誓った…
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