蒼穹綺譚
5
「貴方を…愛…してな…んかあげ…ないわ…」
“糸”と薔薇に隠れた鎖によって創られた
操り人形となった茨姫は
最後まで…僕を拒んだ。
「愛してるよ。春華。君は永遠に僕の愛しい操り人形。逃がしやしない。」
「…一方的な…想いは…叶わない…。ただ…醜く歪むだけ。」
何故…必至に否定するのだろうか。
私自身…ワカラナイ。
「春華…世界は既に醜く歪んでるよ?美しい君は、汚れないまま…そのままでいて欲しい。だから、この部屋に閉じ込めたんだよ?愛してるから、離したくない。」
さらさらと、漆黒の髪が流れる。
薔薇の花びらが舞い、鎖がしゃらんと高く鳴った。
僕の気持ちの揺れと共に“糸”が解けた。その一瞬に気付き起き上がった君は、僕を抱き締めていた。
「私は…貴方が憎い。全てを奪う貴方がキライよ…。」
「……」
抱き締めたまま…静かに春華の独白を聴いていた。
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