[携帯モード] [URL送信]

蒼穹綺譚




「リーシャ…?起きてる?」



ノックもせずに入った部屋には、ゴシック調に調えられた家具と天蓋の降りたベッドがあり、純白と深紅の薔薇に埋もれるようにして眠る、美しい少女が一人。


陶磁器のような美しい白い肌に、濡れ羽色の漆黒の髪。長い睫に、紅く艶やかな唇。



「…春華…って呼ばないと反応してくれないかな?」


「…………。」



ゆっくりと…瞼が上がり、硝子のように美しい瞳が見える。


闇色と深紅のオッドアイの視線が虚空に注がれた。



「おはよう、春華。ご機嫌いかがかな?」



視線がゆっくりと絡む。


春華は一言も発しない。



「綺麗だよ。春華。お人形になってお喋り出来なくなっても、君は美しいままだね。天使のような歌声も聴きたいんだけどね…“糸”を使えば唄ってくれるかな?」


「………ぃ……ょ……」


「ん?なぁに?」



微かな吐息と共に、声が聴こえたような気がした。





[闇へ][光へ]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!