蒼穹綺譚
2
「リーシャ…?起きてる?」
ノックもせずに入った部屋には、ゴシック調に調えられた家具と天蓋の降りたベッドがあり、純白と深紅の薔薇に埋もれるようにして眠る、美しい少女が一人。
陶磁器のような美しい白い肌に、濡れ羽色の漆黒の髪。長い睫に、紅く艶やかな唇。
「…春華…って呼ばないと反応してくれないかな?」
「…………。」
ゆっくりと…瞼が上がり、硝子のように美しい瞳が見える。
闇色と深紅のオッドアイの視線が虚空に注がれた。
「おはよう、春華。ご機嫌いかがかな?」
視線がゆっくりと絡む。
春華は一言も発しない。
「綺麗だよ。春華。お人形になってお喋り出来なくなっても、君は美しいままだね。天使のような歌声も聴きたいんだけどね…“糸”を使えば唄ってくれるかな?」
「………ぃ……ょ……」
「ん?なぁに?」
微かな吐息と共に、声が聴こえたような気がした。
[闇へ][光へ]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!