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蒼穹綺譚
5



リーシャが亡くなってから、ちょうど三日が過ぎる。


あの日彼女の亡骸は、駆け付けた医師に死亡を確認されたあとに、遺体安置所に移動された。手続きが終わった後、アイアンメイデンUで彼女は帰って来ていた。


後から来たトレス君には、リーシャが逝ってしまったことを伝えると、さすがに辛そうな表情になっていた。


彼女の死を悼む者は多く、原因は何だと騒ぎ立てられたが、それはいつしか病死で収拾がついていた。


そして彼女の骸は、明日の早朝に、墓に移動する。


包帯で真っ白になるまで巻かれた様が、死してなお痛々しさを醸し出していたが、偶然なのか、必然なのか…彼女の身体の崩壊は、首までで止まっていた。


死化粧をされた美貌が、今にも目覚めそうな気がする。



「俺が殺したんだ…。クルースニク化を躊ったばかりに…俺の身代わりになったんだから…。……リーシャ…。」



頬を伝う涙は、ぽたぽたとリーシャの上に落ちる。


黒き堕天使の独白に、返事を返す者がいた。


それは死者ではなく、自らを機械だという小柄な神父。



「卿のせいではない。リーシャが自ら選択したことだ。」


「でも!私が…っ!私が躊躇しなかったら、リーシャは死なずにすんだ。私があの時に死ねば…」


「卿はリーシャの意向を無視するのか?」



冷気を帯びたような声が響く。トレス自身も、リーシャを無意識ながらも愛していた。だから、リーシャの遺志を踏み躙られるのが赦せなかったのであろう。



「リーシャは、卿にだけ言葉を遺した。忘れるな。」



規則正しい足音が遠ざかる。







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