蒼穹綺譚
4
「イカナイデ…。独りはイヤ。寂しいの。」
弱々しくなるリーシャの掴む手。私が聞いた、最初のリーシャお願い。
「リーシャ…。」
縋りついたリーシャを、血で汚れるのを厭わずに、私は抱き締めた。
ピッ………ピッ………ピッ………
機械音が、徐々にゆっくりとしていく。
「なんで…リーシャが死ぬんですか?死ななければいけなかったのは…私なのに…。贖罪を担うべき罪人は私なのに…。」
リーシャの心臓が停止しようとしていた。機械音が、怪しく響く。
「アベル…貴方に逢えて…ほんとうに良かった。たとえ、離れ離れになる宿命でも…貴方と過ごせたこの時間は、確かに幸せでした。」
「そんな、今にもいなくなるような事…言わないで下さいよ。ね?治るまで傍にいますから。」
「ありがとう…愛してるわアベル…だから…―み――き―――」
非情にも、華は朽ちて散ってしまった。動かなくなった愛しきヒトの亡骸を前に、宿命という声を聞いた気がした。
ピーーーーーーーーーーーーーーー
「あ、あ、あ、あ゛ぁああ゛ーーーーーーーっっ!!!!リーシャーーっ!!!」
白い部屋に無情に響く、彼女の死を知らせる機械音は、悲痛な彼の叫びにかき消された。
愛しき人の腕の中。彼女は生涯を全うした。頬に伝う涙はまだ温かく、微笑みながら逝った。
冬の湖畔のような瞳は、ただ涙を流していた。崩れ逝く愛しき人の亡骸を、抱き締めたまま。
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