蒼穹綺譚
5
「ねぇ…カイン。私、たまに分からなくなるの。」
無邪気そうに笑っている君。
「何を?」
「私が今みている光景が…幻なのか…現なのかを。」
妙な事を言う君。
春華は、もうじき海に沈みきりそうな陽を見ている。
僕の方を君は見てはいない。
「カインが“私”を見ているのか…。それとも違う“誰か”と重ね合わせているのか…。イザークは果てしない“夢”をみてる。彼は胡蝶の夢か、人の夢かはしらないけど…。私は、世界に“人の夢”を見せられているんじゃないかと…。」
「あぁ…『人が蝶になる夢を見たのか。それとも蝶が人になる夢を見たのか。どこまでが現で、どこまでが幻なのか。』終わりと始まりがわからない。」
「どういうこと?」
「夢と現の境なんか…もう、随分昔にわからなくなったよ。全て滅ぼせば、僕の悪夢も、春華の悪夢を終わる。僕が君という“胡蝶の夢”をみたのか。胡蝶が“僕の夢”をみたのか…。」
「ねぇ…お願いよ。カインはそのままでいて。せっかく身体が再生してきたのに…。わざわざ、茨の道を選ばなくてもいいんだから。ね?“胡蝶の夢”はみなくて良いの。だってカインは“人”だもの!」
僕の質問を無視して、無理やり切り上げてしまった。
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