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夢路綺譚
列車にて



ゆっくりとした旅路だった。


カフスは所持していなかったし、今回は異端審問官側の手伝いで出かけているから、カテリーナさんも余裕のある日程で組んでくれていた。


だから、実際に2日間余っていたし、早めに切り上げられたというのもあって約3日間の移動時間があった。


ゆっくりと列車の旅路を選んだのもそのためだった。


昨日はホテルで休んで、準備を整えてきたからやることがない。


何となく…今回の行き先のことに思いを馳せてしまう。


今回のアッシジでは、トレスが任務に当たっている。


極秘任務だということもあって簡単にしかトレスから聞いていない。


なんでもデータの回収だとか。その程度。


さらに、マタイから聞いた情報だと異端審問官もアッシジに任務に行っているらしい。


内容がぶつかってなきゃいいなと、妙に気になったりする。 


トレスは「故障」とか「壊れた」とか言って、全然自分の怪我を気にしない。


「治す」ではなく「直す」と表現する彼は無理や無謀も気にせずに実行に移す部分がある。


だから…余計に心配になったりするのだが……。


いまだにトレスが気づいてくれた様子はない。


やることがないから、車窓から風景を見つつウトウトしていた。



「リーシャ。やっと見つけたよ。」



「ずいぶんとお探ししましたよ。予想外に貴女が偽名を使い、変装をなさるから…」



聞きたくない声が聞こえてきた。


そこには…


天使のような微笑みを浮かべた青年と


真っ黒な紳士が居た……









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