夢路綺譚
4
「春華。お疲れ様です。派遣執行官になってもなお、異端審問局を手伝っていただき感謝してますよ。」
異端審問官、ブラザーマタイ。
細目で、悪魔の微笑みをする策士家である。
「マタイ…。私が消してしまったあの人達…。どうしよう…?取り返しがつかないのに…またやってしまった…。」
マタイに言っても仕方がない。
言ったところで自己満足。
それは承知の上。
でも言わずにはいられなかったのだ。
「春華が悪い訳ではありません。死者が這い回っているより、貴女が屠った方がいいに決まっているじゃありませんか。それに、異端審問局は、この町を消しに来たんです。町ごと消すのが私たちの仕事だったんです。春華がそれに手を貸した。何も問題はありません。」
慰めているような、事実だけを並べているだけのような…マタイの言葉。
「そっか…。ありがとう。」
「いいえ。感謝される様なことは一切していません。帰りましょう。不破。」
そう優しく言い…まるで恋人と歩くが如く、腰に手を回し歩く。
彼は知らないから…
何も知らないから
シラナイカラコソ…
イマガアル
忘れてはいけない背徳の声。
彼らは高らかに嗤うだろうか?
…愚かな私を…
“我ら炎によりて世界を更新せん”
[闇へ]
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