掴めない
彼女は“風”
心地よくて
存在が当り前
なのに…
†掴めない†
「春華、いるさ?」
「何ですか?」
談話室で、分厚い本を読んでいた春華。
春華は、じじいが認めるほどの博識で、よくじじいと話に花を咲かせている。
「オレと一緒に任務さ」
「そう、わかりました。」
いつも、こんな感じ。
出合った当初は、もっと言葉が少なかった。
もう、ユウの口数が多くなったと錯覚するくらいに。
「なぁ、春華?」
「……何か?」
「何で、そんなに口数が少ないんさ?」
もう、直接本人に聞くことにした。
だって、流石にこの状態で任務は辛い。
ユウみたいに無口でも、六幻を振り回しても、反応があるならまだ良い。
春華は、その反応すら希薄だ。
俺よりブックマンに向いてるんじゃないかと思うくらいに。
「…なぜ?」
「なぜって…春華の反応が希薄だからさ。」
「話すことがナイからとは、結論に至らなかったのですか?」
ものすごく…
ものすごーく…俺って春華に嫌われている?
「ブックマンは、話しかけてきます。アレンは、一緒にいると喋りたい時に喋りたいだけ話かけてきます。ユウも、普通に話しかけてきます。私から話しかけることは、誰に対しても滅多にありません。他の人たちも同じです。話しかけられたときにだけ、私は回答します。」
一気に、話した。今までの最長記録。
ようは…
「俺が特別春華に嫌われているわけでは…ないさ?」
「嫌いだと告げた覚えはありませんが…そう思わせてしまったならば、申し訳ございません。」
「いや、いいんさ。春華は人見知り激しかったし、自主的に私用で話しかける場面って見たことなかったさ」
そう、笑いながら言えば、春華はきょとんとしてから、華のように笑った。
その、初めて見た笑顔に俺は…
「ストラーイク!!!!!!」
思わず、廊下で叫んでしまった。
かなり響いたのか、無関係なファインダーやら通行人まで振り返った。
今回の案内のファインダーは、俺に慣れたのか反応はない。
「次の任務地は、【ストライク】ではなく【アルメリア】です。」
そう、真面目な返答が返ってきた。
前を歩くファインダーが、思いっきり笑いを耐えているのは明白。だって、肩が思いっきり揺れてるし。
「あ、そうさね。地名を言った訳じゃないから安心して?」
「では…」
「気にしなくていいさ。」
とても機嫌の直った俺は、春華の手を繋いでみた。
やはり、無反応。
繋いだまま、廊下を歩き水路につく。
「春華って、何か掴めない“風”みたいさね。」
「風?何の話ですか。それに、ラビ。掴めないって言いましたけど、あなたのイノセンスは風も操れたと記憶しておりますが?」
春華は、そう言った。
たぶん、深い意味なんてのはなくて、単に「風が掴めない」と言った事への返答だろう。
「春華、もっと俺と話して?もっと、俺と一緒にいて?」
「…?よく理由はわかりませんが、善処いたします。」
掴めないなら、掴めるようにすればいい。
何か、そう言われた気がした。
実際は、違うのだろうケド、
俺にはソレで十分な回答だった。
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おまけ
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