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些細なこと2







「春華…いつも、他の奴でもこんな感じなのか?」


「何が“こんな感じ”なのですか?ユウ。」



蕎麦を運びながら、問い返してくる春華。

その蕎麦も春華本人が、そば粉の状態から作り上げた昼食だった。
掃除・洗濯も全ての家事をやってくれている。




「だから、今の状態だ。」


「え?あぁ、違いますよ。アレンは、宿で食事させると大変なことになりますから、厨房を借りて食事は私が用意いたしますが。それに、長期任務は2回目ですし。」


「2回目?前回は誰だ?」


「アレンですよ、アレン。」


「もやしか。で、何で今回はこうなんだ?」




今回の任務での、一番の疑問。

苛立つ事もなく快適な…と任務先で言うのは変だが、実際に過ごしやすいし、食事も、身の回りの世話も、ホームにいる時よりも快適な環境だ。

それに庭があるし、鍛錬もしやすい。




「ユウは、ヒトゴミや煩わしい環境が嫌いでしたよね。それに、食事は蕎麦が好きで日本食を好みます。資料を広げたり、本部への連絡でイチイチ移動するのが煩わしいとも言っていました。入浴は、シャワーだけよりも、浴槽を使う方が好きだと聞き及びました。」



「…あぁ…」



「宿よりも、家を借りて私が身の回りの環境を整えた方が、ユウが快適に任務を遂行できると思いました。それが、今回の理由です。」



そう、春華は言った。

そんな些細な事を気にしていたのかというような、ごく当たり前の事をしただけというような態度。

春華にとって、コレは“当たり前”に該当するのかと驚いたが、俺のことをそこまで気遣った春華の気持ちが嬉しかった。




「そうか…手間をかけさせた。」


「いえ、大丈夫ですよ。ユウが快適に任務を遂行してくだされば。」



にこりと笑う、その笑顔が美しかった。

些細なことすらも、覚えていてくれたことが、正直言って嬉しかった。
だから、春華は誰からも好かれるのかと。
相手の望むものを、さり気なく提供する春華に心惹かれて。




「任せておけ。任務は確実に遂行する。イノセンスは、明日には回収できそうだしな。」


「そうですね。満月の夜が最後の勝負ですよね。頼りにしてます、ユウ。」


「あぁ、大丈夫だ。」






その後、任務終了後の報告書も春華が提出していてくれた。

壊れた六幻の修理も、コムイに渡さずに春華のイノセンスの能力でやってくれた。
俺が、コムイに渡すのを渋っていたのに気付いたのだろう。



「春華…」



「何ですか?ユウ。」



「ありがとうな」




そう耳元で囁いて、軽く右腕で抱き寄せた。




「いえ、ユウが喜んでくれたなら。では、帰りましょう?」





珍しく今回は、機嫌のいいままにホームに帰還した。








END

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