闇夜の紅涙
無言で涙する
ただ、空虚な
闇夜を見上げて
静かにヒトリ
†闇夜の紅涙†
偶然だった。
こんな風に外に出るなんて。
たまたま、気晴らしにでた深夜の森に春華はいた。
無言で涙する春華が…
「…春華?」
「…え…?」
振り向いた春華は、目が赤かった。
頬には幾筋もの涙の痕。
いつから泣いていたのか?
「どうしたんさ?」
近付いても他の反応はなくて、ただ涙だけが流れていた。
声も出さず、静かにヒトリ涙する。
「…な…何でも……ないの…ですよ…」
「じゃあ、何で泣いてるんさ?」
何も語ろうとしない春華を抱き寄せた。
震える身体は冷たくて、何時間ココにいたのかと思うくらいに。
「…ほっ…といて…くださ…い……ラビ…」
「ダメ。お兄さんに話してみ?」
ふるふると、首を横に振る春華。
ならせめて…
「ヒトリで泣くのは止めるさ。…アレンやユウに言えないなら、俺が聞いてあげるし、誰にも言えないなら、泣き場所くらい提供するから。我慢しなくていいよ。」
我慢し続けるから、涙が止まらない。
全て溜め込むから、苦しい。
強がるから、弱音が吐けない。
「ふわぁ…らびぃ…」
「ん…今は思いっきり泣くさ。誰にも見えないように俺が隠してあげる。」
どれだけ春華の言動が大人っぽくても
あんなに行動がしっかりしてても
とっても信頼でき頼れる存在でも
所詮は《最年少》のエクソシスト。
元帥にだって、慣れる前に強制的にならされた過去を持つ。
「…ごめ…ん…なさい…」
「ん?何を謝るの?」
腕の中で震える春華は、泣きながら俺に謝った。
「泣いちゃダメなの。弱音なんて言っちゃダメ、甘えちゃダメ。常に冷静に、確実に判断し、ポーカーフェイスを崩さない事。…お前は教皇の兵器で道具だから、神の人形らしく、神の意思に従えって…」
「…え…?」
アレンと一緒にいたいなら、逆らうな、おとなしく従えって?
大元帥からそう言われて、今までの激務をこなしていたと言うのか?
「…大丈夫さ…春華。俺はブックマンだから。」
「…うん…」
「全てにおいて中立の立場だけど、春華だけは必ず護るから…」
「…あり…がとう…らび…」
箱舟の事件後、たまたま見付けた春華
もしかしたら、元帥になったあの日から
春華はヒトリ、泣き続けていたのかもしれなかった
《アレン》
《あれん》
《アレン》
《アれン》
あの白髪の少年は、この涙を知っているのだろうか?
痛みにヒトリ耐える春華を。
「俺が傍にいてあげる。泣き場所を提供してあげる。…春華…あのね?俺も春華を愛してるんさ。」
静かに縋りつき涙する春華は、あまりに儚く美しかった。
それは幻のように儚く
蜃気楼のように朧気で
愛しくて哀しい想い人
けれども涙が消えた時
守護天使の強さが甦る
気高くも儚い、愛に生きる俺の想い人…
春華
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