記憶の彼方2 春華は、やはり心を閉ざしていた。 教団に来た時から、春華は僕と神田以外には感情が希薄な、人見知りの激しい子だった。 けれども、ソカロ元帥やミランダさんに、コムイさんに対しては心を開いてたし、ラビ達やリーバー班長とかには多少なりとも開いてたと思う。 なのに今は、春華は誰にも心を閉ざした。 「春華」 「何ですか?ウォーカーさん」 あんなに愛し合っていたのに、今や痛烈なほどに春華が僕を拒否していた。 神田も、前みたいに名前では呼ばれていなかった。 「春華、アレンって昔みたいに呼んで下さい…」 「…アレン…」 何の感情もない声 愛しい春華の声が、痛かった。 「お前なんか要らない」と言われてるようで、何も映さない冷めた瞳も。 「用件は何ですか、アレン・ウォーカー?抱き付く意図が不明です。明確な理由を提示して下さい。」 「愛してます。春華が僕を忘れても、愛してくれなくても、僕は春華が大好きで必要なんです。」 「……一方的な…そんなものは不要です。迷惑だから離しなさい、アレン・ウォーカー。私は人間が嫌いです。」 『人間が嫌い』なら、なんで愛してくれたんですか? なんで、全てを受け入れてくれたんですか? なんで、無条件に信頼してくれたんですか? 「…い…たい…」 「え?」 「頭が…い…た…」 頭を押さえて、力なく崩れ跪いた春華 「声が…痛い…お前の声が……。何…かが私…に…返せと…叫んで…」 「?!」 そう呟くと、春華は僕の腕に崩れ落ち気絶した。 僕の声が、何か変化を呼んだというのか? そして、コムイさんに今の事を報告した。 [*前へ][次へ#] [戻る] |