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零のイライラ

「おい!あんた…」



ピアノの前で振り向いたは


………女子生徒?


そういえば、この顔は見たことがある。


昨日、転校してきたこの学園2人目の女だ。


寮にも入ったらしく、昨日の晩は梅さんが腕をふるった豪勢な料理で歓迎会をしていたような気もする。


はるかのテンションが異常に高く 他の寮生たちが若干ひいていた。



「…今弾いていたのは、あんたか?」



いきなりの侵入者に驚いたのか、鍵盤に置いていた形の手を浮かせて、固まっている。



「………ハイ」



予想外の人物が必要以上に固まっているのを見ると、毒気を抜かれ予定していた言葉を言うのがためらわれた。


さすがに女は蹴っちゃだめだろ…


何も言わないで出て行くのも不自然だし、とりあえず無言で壁際のソファに横になる。


そいつは、固まったまま俺の様子を見ていたようだが、しばらくするとピアノの練習を再開した。


近くで聞いても、下手だな。


始めから弾いていた曲が問題の所へ差し掛かる。

…やっぱり違う…


そして、やはり間違いには気付かず曲は進み、次で指が滑る。


一度退いたと思ったイライラがまた湧き上がり、ソファから起き上がりピアノに近づく。



「…あんたなぁ…」



指差した楽譜と鍵盤の上の指を交互に見比べる彼女の背後から声をかける。



ビクゥ!



音でもしそうなぐらいのビビり具合で背筋を伸ばして、手を胸の前で構える。


その姿勢が何かに似ていると思ったが、その何かが出てこない。

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