帝白物語 第1章
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私は試合の後はもちろん病院。
だから…アレだよね。
みんなとバイバイするのが名残惜しいよ。
「太陽ー!」
抱き着いてくるのはもう定番。
「菊ちゃんまた学校で会おうね。近いうちには復活するから」
「待ってるにゃー!」
相変わらず可愛いんだから。
「隣がいないと寂しいよ、太陽」
隣の席といったらもちろんこの方不二周助。
「どーも、すぐに煩い奴が来るから安心して」
「くすっ。そうだね。」
煩いってとこ納得しないで!
「鏡見…」
心配そうに声をかけてきたのはタカさんだった。
「なに?どうしたの?」
「どうせ亜久津の事でも心配してるんスよ」
横入りしてきたのは…え!?珍しい!海堂だよ。
「亜久津の事なら大丈夫…。なんか知り合いだったらしいし。」
「「「は…?」」」
リョーマ君と手塚以外の皆が声を出して驚いていた。
…私の事は出来るだけバレないようにした方がなんとなくいい気がするのは私だけだろうか。
「太陽先輩は…ん゛!?」
「リョーマ君少しお口にチャックしましょうね。」
「「「……。」」」
何でそこまで凝視するんだよ…。
ここは多分撤回しなくちゃならないよね…リョーマ君じゃなくて亜久津のこと。
リョーマ君は口を手で塞いであげただけだし。
「亜久津とは小さい頃に会っていたらしいからね」
本当かよ、みたいな目で見てくるけど…一応本当だよ。
そこで頭を抱えていた手塚が口を開いた。
「…太陽は一応病人だ。そろそろ帰らせてやれ。」
手塚部長ー!
たまには気が利く事するじゃないの。
「って事で私は帰るね。バイバイ!」
みんなとバイバイをして私はタクシーを探していた。
とりあえず景吾の車だけは乗りたくない。
もし景吾に見つかったら意地でも車に乗せられそうな気がするから。
とりあえずタクシーを探せ。
ウォー○ーを探せ的な気分だ。
「タクシーは…」
―ポン―
私の肩に不意に置かれた手に反射的に私は振り向いた。
私の視線の先にいたのは今会いたくないと思っていたあの人。
「…お前は何してんだ。」
「…………きゃあ★」
せっかく『★』マークを付けたのにも会いたくなかった人、景吾は冷たい目で私を見下ろしていた。
「…お前はさっさと病院に帰れ。」
「今から帰るんだってば!怪我だってすっかり治ってるんだからね」
ふんっ、と私ながらにもえばってみるも俺様景吾には全くの無効果だった。
「…何で俺に声掛けに来なかった」
リョーマに続き眉間にしわをよせる景吾。
最近眉間にしわよせるのブーム?
なんて…すいません。
そんなハズないですね。
「部長は色々忙しいじゃない?」
景吾は私をもう一度見るなり溜め息をついた。
その後はやっぱりタクシーに乗らせてもらえる訳がなく、あの大きいリムジンに乗る嵌めになってしまった。
今日は景吾の後ろにいる大きい人付きで。
名前なんだっけ?去年も大会出てたし知ってるハズなんだけど。
「行くぞ、樺地。」
「ウス」
あぁ、そうだそうだ。
樺地くんだ。
景吾に振り回されて残念な方。
「ほらてめぇもだ、太陽。」
「分かってるー!手捕まないでよ〜」
無理矢理車に乗せられたのだった。
あの時、リョーマ君が近くで見ていたなんて思ってもみなかった。
それが後々私の弱みになる事も。
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