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帝白物語 第1章
confront2





「太陽、座りなさい。」



精市の病室のベッドに私は正座で座らせられている。私の真っ正面にはドス黒い笑顔の持ち主の精市。




何でこんな事になってるかって?そんなのは私が知りたいよ。



私絶対、何も悪い事言ってないし…。



看護婦さん箸踏むし、精市を食べようとしてたし、昼からヤられたらこっちが迷惑だし…。



なのに何で土下座なんて…。


精市のあの裏のある怖ぁい笑顔を見たら本能的にね、体が精市の言う通りにしてたんだよ。


「…さぁ話しようか。」

「は…い。」


朝までは私も病んでいたのに…それで希望もらっっていたのに…あの優しさはいずこへ??



「まず一つ」

「はい…」

「病院では大声をださない。」


それは…はい。
幸村様の言う通りでございます。

もはや何も言えない。


「そしてもう一つ。」

精市の私を見る目がキッと鋭くなった。



「太陽が言ってた『真っ昼間から…』のやつだけど…」


「えっ!?」


そこって触れるとこ!?

敢えてとか?




精市ってば一人で大人の階段上ってるからって…


「マッサージをしてたんだ。」



…………。




「…ハイ??」



「前にあの看護婦さんが肩凝ってるって言っていたからマッサージしてあげてね。そこからたまにマッサージをやるようになってたんだよ。」




…あの看護婦…。


誤解を招く様な言い方しやがって…。




「それとも…」

「…なに??」


精市の顔が息のかかりそうな位までの近くにあった。


いつの間にこんな近くに…。


「太陽はそういう事を想像していたのかな…?」



精市の言葉で顔の体温が一気に急上昇したのが分かった。


精市の顔がもの凄く近くて甘い声に…私をドキドキとさせるには十分だった。



「ち…ちっがぁーう!!精市の馬鹿!阿呆!」


両手で力いっぱい突き飛ばしてみるもさすが男、ちゃんと突き飛ばされないように踏ん張っていた。


「アハハハッ!」


「な…っ!」


精市があんなに爆笑したのですぐに分かった。



自分は…からかわれたんだということに。



「ひっど…」

「ごめん、ごめん。太陽からかい甲斐がありすぎるんだよ。」



涙がポロリと出るかと思ったよ。


小悪魔精市だ。





「ほら、お昼食べようか」

「……。」

分かりやすい程頬膨らませて激怒表現をしてみるも「ごめんね」と言ってから頭をポンッと叩いてガキ扱いだ。



結局私はこういうキャラなのだ。


青学だとちょっと違うハズなんだけどなぁ。


もうちょっと…キリッとしている、と思う。



ほら…自分で壁作ってたから。



「ほら、アーン」

「へ…?」


私のお昼ご飯…?


それらしきものを精市の箸だと思われる物で私の口の前に差し出す。


「口開けて?」


なに…その天使の上目使い。(幸村にしては普通)


悪魔と天使のギャップ激し過ぎる…。

はぁ、とため息つく私なんかどうでもいいように精市はまだ口を開けさせようとしている。



「開けないの?」

「…分かったよ、ハイ!」


このまま口を開けるまで待たされると思った為仕方なく口を開ける。


すると病院食定番の薄味が口の中に広がる。


まぁ私の場合、すぐ退院できるからそんなに薄味にされてないんだけどね。

「美味しい?」

「…うん。」

「なら俺も食べよう。」
…毒味かよ!



ってか思ったら、その箸精市の使った訳で…精市もその箸使うの…?



あぁ、分かった。

精市はそういうのは気にしないタイプか…。


また無駄な心配したかも。


「はい、太陽、もう一回。」


「はいはい。アーン」


この時私は目の前にいる精市とご飯の事しか考えていなくて、この部屋にたくさんの人数が向かって来ている外の足音なんて全く気にしていなかった。





―ガラッ―


「ゆーきむら!」


「「!?」」



閉まっていたハズの扉を反射的に目だけを向けてしまった。



私の目に入ったのは…あの立海のレギュラーではありませんか。



「……あ。」


…思ったら今の私と精市は…危ない関係だ。


ベッドに二人で座って、しかも私は赤ちゃんの様に食べさせてもらおうとしている形のままんな訳で……完璧に勘違いされる方向になる。



「来てくれたんだね、みんな。」


「あぁ…。というかその…たるみ過ぎとる女はなんだ。」



ヤバイ。真田が私をものすんごい目で睨み据えている。



「幸村にも…彼女が居たんのか。」


おい、ジャッカル君だよね?確か…去年はハゲ頭で記憶したような気がするし…。



そんな冷静に言わないでほしいし…。しかも勘違いだから!


とか内心思いつつも先程からこの状態から全く体を動かしていなかった。



…というか、視線が痛すぎて動く事ができない。


私の口はアングリと馬鹿みたいな開いたまま。


精市の箸の先のおかずも私の口の手前で止まっているまんまだ。



「太陽、口辛いだろうし、普通に食べていいよ。」


精市の言葉が私を縛る視線という鎖から解き放ってくれた。


その為口間近にあったおかずをとりあえず食べた。



「あの…じゃあ私失礼しますね。」



私はお昼ご飯なんてもうどうでもよくなって人ぞよく知る人達の間を掻き分けて部屋を出て行った。




―ガシッ―


予定だった…。
「痛っ!誰、私の腕掴んだのは…ってあ!!」

「お久しぶりですねー。先日はどうも。」



私の腕を掴んだの最近関わりが1度あったことのある切原赤也くん。



「赤也、知り合いなのか?」

「え…?まぁ…ネ?」

柳の質問に赤也は『秘密あり』みたいな雰囲気で話す。


秘密もなにもありません。


皆様は知ってますよね?


彼がバスを間違えて青学まで来た事を。



それを私がただ案内してあげただけの話。


「誤解を招く言い方しないでー!」

「ちぇっ。」


舌打ちをして手を離すのかと思いきや…まだしっかりと掴んだままだ。


そろそろ部屋に…。


私の事情的にも一応青学のマネージャーですから?


立海のレギュラーの中にいると気が遠くなりそうな予感もするので…。
















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