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帝白物語 第1章
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玲也の声が聞こえた後私は何も出来ずにそこに頭を抱えて座っていた。


だけれどしばらくすれば気持ちも段々落ち着いて来た。

何と言ってもふく風が妙に私に冷たくあたってくるもんだから。

この季節、普通なら涼しいと感じるべきなのだろうけど。

どうやら私は風が寒く感じる程冷や汗をかいたらしい。


「…戻ろ」

このままここに居たって何もならないと思って部屋に戻った。

そしたらそこには居るはずの無い景吾がいた。


「景…吾」


久しぶりに会った景吾に何て言えばいいのか分からなくて、名前だけを呼んだ。


鋭い景吾の事だ、このままここにいたら質問攻めに合うに決まってる。

何しろウェアを着てラケットを持っている。

景吾にテニスをやろうと誘われた時、あれだけ否定したし。


こういう時には逃げるのが1番だと思うんだよね、私。


冷や汗のせいで体がベタベタしていたので部屋にあるシャワー室へと向かって行った。


景吾が私にかけた言葉は「シャワー浴びたら広間に来い!」という命令的なもの。


私はそれに返事をしないままシャワーを長く長く、浴び続けた。
















「太陽ちゃんは?」

「今シャワー浴びてる」


景吾にそう言われた忍足くんはガックリとしていた。

まだ私、太陽に会えないのか、とでも思ったのだろう。


「でも…何でシャワーなんて浴びるん?」

さすが、そこは鋭い。

病院から帰って来ただけならばシャワーなんていちいち浴びたりしないもの。


「…テニス、やったみたいだぜ」

そこは景吾も隠したりしないで忍足くんだからこそ真実をそのまんま伝えた。


「へぇ〜。あの子前はダメかったんやなかった?テニス」

「そのハズ…なんだがな。」


どうしてテニスをやろうと思ったかなんてこの二人が知る事は多分無い。

私はただ…向き合おうと思っていただけなのに。


「でも太陽ちゃん…全国の決勝で消えてもうたんやろ」

「お前の情報と俺の情報が正しければな」


私のテニスの歴史を二人は調べていたのだ。

前にやりとりしていた情報とはこれの事。


さすがに玲也の事までは辿り着かなかったらしいけど。


でも私が決勝で消えたというのは紛れもない事実だった。

決勝の前に玲也と私の事故が起きた。


だから私は…その大会から姿を消した。

部長だったくせに、試合にも出れないで玲也を傷つけて眠っていた。

大会の結果は見事に負け。2位で終わってしまった。

私のテニスはそこで終わった。

その後は部長として試合には出ずに皆のサポートばかりをしていた。


「太陽ちゃんがテニスを辞めた原因は分かったんか?」

「さぁ…な。でも…玲也って奴が太陽の前から消えた事が関係してるみたいだぜ」

「玲也…?誰やそれ」

「知るか、ただ…太陽にとって大切な存在だった事は確からしい。」

景吾は見事それを見抜いた。

私はいつも彼に頼っていた。

景吾なら…何でも分かってくれているもんだと。

























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