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帝白物語 第1章
oath*ATOBE

「今日太陽ちゃん退院なんやって?」

「何でお前が知ってたんだよ」


放課後、今日は部活が休みだから急いで帰ろうと思っていた。

太陽が退院なら尚更。

久しぶりにアイツの顔が見たい、会いたくて仕方がない。


それなのに…何で話してない忍足に太陽の情報がいってんだよ。

「俺の情報網をなめんといて。それにしても…いつ会わせてくれるん?太陽ちゃんに」

「…お前もしつこいな」

「約束や。跡部がそこまではまるなんてそう無いからな。」


「分かった。ついてきな」


いつまでもしつこいので今日は忍足も連れていく事となった。

女の事となるとすぐこれだ。

まぁこれで氷帝の天才っていうんだから多めには見るけどな。




車に乗るなり忍足は珍しく話が止まらなかった。そんなに太陽に会いたいのか。


「太陽ちゃん…どんな子なん?」

「…最初に比べれば最近はヤケに大人しい」

「なんで?」

「知ってたら苦労しねぇよ」


俺は太陽の事を何も知らない。

だから…アイツの口から聞きたいのに。

何も言わない。


腹が立つ。

なのに放っておけない。


「跡部…面倒な子好きになったんやな」

「…好きでもねぇよ」


好き、なんかじゃない。
















「相変わらず…ごっつぅ家やな」

「そうか?」

「んで太陽ちゃんは?」


「ちょっとここで待ってろ」



太陽を呼びに行こうと部屋に行ったがアイツはいなかった。

母さんからもう太陽は家に連れて帰ってきたという連絡はもらったからいると思ってたんだが…。

太陽の部屋を探し回ったが隠れてるとかそういう訳でも無いらしい。


そのうち会えるだろう、と諦めて部屋を出ようとした時だった。

「景…吾?」

振り向いた先には太陽がいた。

「太陽!お前今まで何処に……」

よく見ると太陽はウェアを着ていてラケットを持っている。

それに…明らかに様子がおかしい。


「お前…どうした」

「久しぶりにね…体動かしただけだよ。」


太陽はそれだけ言うと部屋の中にあるシャワー室へと向かっていった。


テニスをやってきたのは確かだろうけど、何かあったな。

普通ならスッキリした顔で出てくるだろうに、太陽は放心状態だった。


俺はアイツの中にある過去を全て知っている訳ではない、けれど…太陽が事故に遭った日の姿を見て大方予想がついた。

『玲也…』

と寝言でそいつの名前を呼ぶ太陽は苦しそうで記憶によく焼き付いている。


太陽がテニスをやらない理由は恐らくそこにあるんだろうな。


「太陽!シャワー浴びたら広間に来い!」

それだけを言って入口辺りで待っているであろう忍足の元へと向かった。



















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あきゅろす。
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