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帝白物語 第1章
discharge

「…私は精市と過ごせた時間楽しかったんだけどな」


これは正直な気持ちだ、全くと言っていい程嘘偽りは無い。

「…それは俺もだよ。」

精市は立っているのが疲れたのかベッドの上に座った。

その後私はまとめた物を椅子の上に置いてから精市と同じようにふわふわしたベッドに腰を下ろす。


「精市はテニス出来るって私は信じてる!」

「あぁ」

「憎まれっ子世にはばかるって言うじゃん?」

「それ厭味?」

ニコッと笑う精市の笑顔はいつもの様に最高に怖い。

先程向けられた目に比べれば対した事はないが。


「絶対…出来るよ」

「うん」


すると精市はどこか遠くを見ながら語り始めた。

遠くを見る目は寂し気で何か後悔でもしたのか。


「俺昨日、真田に当たっちゃったんだよ。」

「…?」

「先生達がテニスは出来ないっていう話をしてたのを聞いてさ。真田達が関東大会に行けたのが疎ましく感じたんだ。」


あの精市が…。
医者の話していた話はどれほど精市に絶望を与えてしまったのか。

テニスを出来る真田達がきっと、本当は羨ましかったんだと思う。


それでも精市はもう心を決めたハズだ。


「でも俺はもう決めたよ。太陽がちゃんとお見舞いに来てくれるなら俺頑張るよ。」

「…仕方ないね。私がちゃんと来てあげるよ。」

「それとあと一つ。」

窓に向けられていた目線は私に向けられた。

「君にも、もう一度テニスを始めてほしいんだ。」

「……っ。」


それだけは約束…出来ない。してはいけない、決して玲也のせいとかじゃない。


勇気が無いだけ。


「俺は太陽に初めて会った時に言ったよね」

君は僕の希望にもなるんだから


「太陽がテニスを笑ってやってくれていたら俺は頑張る事が出来ると思う。」


…私が精市の希望に…。

私なんかがなっちゃってもいいの?


「太陽だから…俺は頼んでるんだからね」


「…いいの?」


不安だった。

私がテニスをする事で…玲也を傷つけ、周りの人までも傷つけるんでは無いかと。


「大丈夫、俺も太陽を守れるように頑張るから」

「…ダメ。」

「…??」

「私だって守られてばっかりじゃいられないんだからね」



精市は一瞬目を丸くした後いつもの笑顔に戻った。その方が私らしいと言ってくれて。


今日は精市とここで過ごせる最後の日。


だからかな、病院なのに妙にもり上がってご飯の時間も二人で今まで以上に仲良く食べれた気がする。






ありがとう、精市。


私は確かに貴方がいた事で成長できた気がするよ。



それは紛れもない貴方のおかげ。





















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あきゅろす。
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