帝白物語 第1章
GAME5*AKUTSU
あの女にあったのは5年前。テニスを辞めるきっかけになったのもあの女。
「ねぇー、玲也今日は何すんの〜?」
「なら今日は狙い打ちでもやるか」
公園を歩いていると不意に耳に入った二人の声。テニスラケットを持っていて、持ち方からして明らかに最近嵌まり始めました、的な奴らだ。
俺はあんなつまらない球遊びを思い出しただけで腹が煮え繰り返りそうになったのを覚えている。ただそれが気に食わなくて俺は声をかけた。
「暇なら俺が遊んでやろうか…」
もちろんルールは守るがフェアではない。二人は振り返って俺を瞳に写す。
女の方は喜んで声をあげていた。
「いいよ!私太陽っていうの!名前位は教え合わなきゃね」
太陽、確かにアイツはそう名乗った。だが俺は名乗るつもりなど全く無い。
「お前に教える必要はない。」
そう言うと隣にいる玲也と呼ばれていた男に睨まれた。
…面白い。
「おい、俺がやりたいのは女じゃねぇ。てめぇだ」
指をさしたのは男の方。相手も俺を良くは思っていなく試合をやる気満々だった。
だからそのまま試合をするハズだった。なのにそれを狂わしたのがあの女。
「ダーメ。私とやるって言ったんだから私とやろう!」
「お前が負ける事は目に見えてんだよ!お前じゃつまんねぇだけだ。」
この言葉を後悔するだなんて俺は予想もしてなかった。
隣にいた男がニヤついていたがそんなの気にもならなかった。
「太陽頑張れよ」
「うん、玲也頑張ってくるわ」
さっきまでは自分がやる気だったくせに気が変わったのか、いつの間にか応援側に回っている。
「俺はなぁ…っ!」
「負けるのが怖いんだ?」
太陽とかいう女はいっちょ前に俺を挑発してきた。だから俺はそれにのったまで。
「…決定。なら早くやろー」
太陽は一人でさくさくと公園のコートに走り出した。それに比べて男はのんびりとしていた、そして俺に一言。
「アイツの事、ナメたら痛いめ見るよ」
「うるせぇんだよ!!」
俺の怒鳴り込みにも全く怯えない、つまらない。なんなんだ、コイツらは。
テニスコートにつくなり太陽は既に準備満タンだった。
「ラケットは玲也の借りてね」
「げっ!俺の使うのかよ…。はぁ。」
嫌々俺にラケットを渡してきてくれた玲也。
「…早くやるぞ。」
「はーい」
とりあえずハンデという事にしてサーブを与えた。
「1セットオブマッチ」
男のアイツが審判をやってるから多分ひいきは無いハズだ。
したりしたらでぶっ潰してやる。
「せーのっ」
―パン―
やっぱ初心者か…。
サーブがかなり緩い。
「勝敗は決定したなぁ!」
―バン―
鋭いコースをついてやればすぐに…
―パン―
「油断は禁物でしょ」
今…何が…。
ボールはコロコロと確かに俺のコートに転がっている。
「…なっ!」
「だから言っただろ」
あの男が言ってることは、確かに起きた。
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