[携帯モード] [URL送信]

帝白物語 第1章
GAME4
亜久津はリョーマ君の動きを見てから狙ってボールを打つ。


それが彼のプレーだった。



リョーマ君は最初の方こそは着いていけなかったがさすがだ。


あの1点をとってから彼の動きが完璧に変わった。


逆にボールを打たれてもそこからまた切り替えした。

「おぉぉー!」


そして彼からポイントをまた奪ったのだ。

「アンタはいい踏み台になるよ」

「ぶっ潰す」


あの亜久津を相手にリョーマはしっかりと戦っている。


今までの亜久津にしてみれば中々ないことだろう。

ましてやボールを返されることさえ無かったのだろうから。


リョーマ君は言った。

亜久津がいい踏み台になると。


そして二人のラリーは再び始まった。


「ねぇ、アンタ太陽先輩を知ってんの?」


―パンッ―


「アイツを忘れた事なんて1度もねぇ」


―パン―

「…ふーん。なら俺が勝ったら…」

―パンッ―


「っち!」

―パンッ―


「それ、教えてもうから」


―バン―



あれは…

私があの技をみるのは初めてだった。




「きたぁードライブB!」




リョーマ君はやっぱり…すごい。



亜久津が緩急をつけはじめても早くもそれに順応している。



リョーマ君のテニス…。


私はあの時、『リョーマ君だから』…テニスが出来たのかもしれない。




そして勝負はいよいよマッチポイントを迎えた。



「…太陽、何処へ行くの?」

私はこの場を離れようとした時不二に声をかけられた。


「リョーマ君なら大丈夫、絶対勝てるから。…ドリンク作ってくる。」

「そう…」

私はそう言ってその場を離れた。









太陽…
まだドリンクは残っている。

一体何処へ行くんだい…。


「ゲームセットウォンバイ青学越前!6ー4」


青学は都大会を制覇していた。


私はその場所にいない方が相応しい。





だから…離れた。


「じゃあちゃんと約束通り、教えてもらわないと」

「…っち。」


約束通り、亜久津が太陽を知っている理由がリョーマに明かされる事になった。


「あの女は…5年前俺がテニスをやめるきっかけになった女だ」

「理由は?」

当たり前にそれだけでは分からない、リョーマはもちろん理由を聞いた。


「……あの女に負けた。それだけだ。」



亜久津はそう言ってコートを後にした。



「…太陽先輩…に…。」


リョーマは不思議そうな顔をしてその場に立ち尽くす。

周りの声も耳に入らずに…。








「悔しいでしょ。亜久津くん。君にとって初めての敗北ですからね」


伴爺が戻ってきた亜久津に声をかけるも亜久津は不機嫌そうに言う。


「…初めてじゃねぇ」

「…そうですか。君に敗北を経験した事があったのですか。」


伴爺は顔に出さずとも声は少し揺れていた。

まさかあの亜久津が昔に負けているなんて思っていなかったのだから。


「爺…俺はもうあの小僧との戦いで充分だ。」


伴爺の亜久津を部員にする作戦も悲しく終わったのだった。
















4/6ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!