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帝白物語 第1章
GAME2


「…すごい。」


先程まで有利の位置にたっていた千石から綺麗に得点したのだ。


千石の表情は渋っていた。


それもそのはず。

あそこまで引いて溜めて打ったのなら球もかなり重くなっている。

その球を打ち返すを出来なかった千石は感じただろう。

鉛を打った感覚だ、と。




この状況になって技術を磨いた桃。


一体どこまで成長していくのか。


「…足、持つといいね。」

「先輩は…桃先輩が負けると思ってんの?」


隣にいるリョーマ君が私にそう質問した。


そんなの…答えは決まってる。


「負けるハズ無いって。」

「……あっそ。」


返事はそっけなかったけれど彼は少し微笑んでくれた……気がした。



桃の足はそろそろ限界に近づいていた。

もしかしたら限界を超えているかもしれない。



「ゲームセット!!」


なのに彼は…この不利な状況で逆に強くなった。


そしてあの千石に勝ってしまったのだ。




「桃…っ!」

私だけでは無く乾と1年生も駆け寄って行く。





「太陽先輩…っ、いってぇぇぇ!」

何か言いたそうな桃を気にすることもなく取り敢えずこのコートの外に運び出す。


「桃先輩かっこよかったです!」

「おう…サンキュー!」


…ここまで無理しちゃって。

「はい、処置するから大人しくしていて。」

「じゃあ鏡見、後は頼んだ。」

乾に桃の治療を任され、乾はすぐに試合を見に行った。


次の試合は…?


「お前またオイシーとこ持ってくんかい」


目の前には堂々とした越前リョーマの姿。


帽子を被ってコートに向かうリョーマ君の姿は小さいのに、大きかった。


「越前…あまりネットには近付かない方がいいよ」

河さんが何やらリョーマ君に注意をしている。


果たしてそれがどういう意味なのか、私には分からなかった。

「越前、試合相手の亜久津って奴に怪我させられてるんスよ」


不思議がっていた私に桃が気を利かせて教えくれた。


「怪我!?」

「まぁ色々ありまして…痛た。」


「…テニスを何だと思ってるのかな。」


河さんのさっきの注意の意味何だか分かった気がした。


ようは前に出てしまえばリョーマ君の身が危ない、ということなんだろう。


「大丈夫、アイツはまた勝っちまうんスよ」

桃の言い草はまるで何か先を予想していた。

今までのリョーマ君を知っているからの言葉。

桃とリョーマ君は先輩後輩では1番仲が良いと思う。

きっとそう思ってるのは…私だけじゃない。

「…うん。そうだよね」


桃の言葉は妙に説得力があって私は素直にそう思えた。



「…私は応援に言ってくるね。」

「俺はここからでも見えるんで…」

「…そ?なら行ってくる」

そこに桃を置いてけぼりにして私はフェンスの近くまで。


「…あの女!」


亜久津は私を見るなりそう呟いた。


「ねぇ、よそ見なんてしてていいの?」


リョーマがもちろんそれを遮る。


「っち」

「なに?太陽先輩に惚れちゃったとか?」

始まる前からリョーマは亜久津に喧嘩を売っているようだ。

…リョーマ君のそういう所、嫌いじゃないんだけど。


「そんなじゃねー!…約束通り、今から遊んでやる。」


亜久津はそう言うとリョーマ君の目の前にラケットを突き出す。


審判が注意しようとするも亜久津の迫力には勝つ事は出来なく、そのまま試合は始まった。



私は…亜久津なんて知らない。



なのに…なに?

















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あきゅろす。
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