帝白物語 第1章
friend5
「太陽…」
「…ごめん、もう大丈夫。」
あれから少しばかりの時間が過ぎた。
私は手塚の隣に座らせられてしばらく落ち着かされついた。
これも、もちろん手塚の気遣いから。
「ちょっと怖い夢思い出しちゃってさ…」
「そうか…無理はするな。」
「ごめんね、手塚。今日だけだから。」
「お前は頑張り過ぎなんだ」
ふと窓を見ると太陽はそろそろ隠れようとしていた。
私はそこでどれだけの時間が過ぎていたかよく知らされる。
「ごめんっ!…こんな時間まで付き合わせて…!下まで送る!」
「いい。俺が好きで付き合っていただけだ」
「…ダメ!ほら、早く行くよ。」
「おい、お前は一応怪我人…ってはぁ」
言うことを聞かないのをようやく理解していただけたそうで私は部屋を出てエレベーターに手塚を乗せる。
「1階へ参りまーす」
「はぁ…」
私は一人ガイドさん気分でボタンを押してエレベーターを運んで行く。
―チーン―
「太陽、やっと検査終わった…って、いないのか。」
精市は私がエレベーターに入ったのと同時にエレベーターから出てきたようですれ違いとなっていた。
「誰か…来た…か。また…跡部か?」
景吾が今日も来ていたのか、と勘違いまでされていた。
私はただ手塚を送りに下に行っただけなのに…。
それがいけなかった?
私は精市とは…友達でいたいのに。
■■■□■
「…精市?検査から帰ったの?長かったねー。」
私は手塚を送った後、すぐに部屋に戻った。
精市は既に私の部屋に帰ってきていたようで私に背を向けて座っていた。
「…そうそうさっきまで…キャ!」
「太陽…っ!!」
私は精市に苦しい位に抱き着かれていた。
「…せ…いち?」
「……。」
精市の様子は何かおかしくてそれでもって私は苦しいのに…彼が心配になった。
「…なーんて。びっくりした?」
「!…精市!?」
「どんな反応するかな、と思っただけだよ。」
「もうっ!」
本当に…?
私のうたぐり深い性格が精市の態度をおかしく感じさせているのだ。
寂しかったのだろうか…?
私と精市がこんなに近くでいられるのはあと少し。
私が退院するまでの時間だけ。
『時は金なり』
もっともっと精市を支えていてあげたかった。
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