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帝白物語 第1章
お迎え

「ここどこーっ!」

がむしゃらに走った太陽が目的地に着くはずもなくもう昼をとっくに過ぎていた。


やばい、
迎えにきて
もらってるのに。


そこに一台の車が後ろから物凄いスピードで近付いてくる。

それはまさに太陽を目指している様に。

「えっ!」

私何もしてない!
迷ってたけど
多分悪いことは
してないハズっ!
(確実は無い。)


―キィー―

素晴らしい音と共に太陽の前に車は止まった。

先程は遠くでよく分からなかったが近くで見るとこれはまたなんだか…とてもとても綺麗な高級車ではないですか。

なんでこんな高級車が?
私にどんなご用が?

―ウィーン―

目の前の車の窓がゆっくりと下がっていく。中には綺麗な女性がいた。女性は私を見てアラッとか言って目をキラキラと輝かせている。

「あなた太陽ちゃんでしょ?すぐ分かったわ。」


やっと見つかったぁ、とか何だか言っている事からこの女性はまさかまさかの母の友達の方ではないのだろうか。
私の頭は珍しく落ち着いて冷静な考えを持っていた。


「家に行ったら居なかったから探したのよ〜。」

とりあえず探して頂いたらしく申し訳なくなった。

その前に…こんな高級車をこの街で走らせていたのか。私はなんて野郎だろうか。


「すいません」
「いいのよっ!さぁ早く家に行って荷物取って行きましょう」

そういうと車に乗せられた。…この目の前の夢の様な車に。

私はジャージという似合わなすぎる服。この車に乗るには相当な覚悟が必要だった。


前には運転手さん、私たちの座る場所と運転席の間にはカーテンがあった。


とても黒くて長くて車じゃないような車。
私はこんなものを乗った事が有り得ないと思う。
きっと2度とない。


「そんなにキョロキョロしないで大丈夫よ。」

「あ、すみません!初めてこんなに素晴らしい車に乗ったので…」


なんだか高級車に普段乗っていないことの不慣れがとても恥ずかしく感じた。一般市民は乗れないのが当たり前なのに…。


ぐちゃぐちゃと考えていたらあっという間に我が家に着いた。この距離だとあの公園との距離は遠からず近からず、という所。

「じゃあ急いで取ってきますね。」
「段ボールに入ってた荷物はもう運んでおいたから大丈夫よ。」


えっ!?
まぢでいつの間に?
…私すごい人に
お世話になるんじゃ…。

ってかそれほど
待たせてたのか…。




「じゃあ…小荷物を持ってきますね。」


そうは言っても既に玄関に置いておいた為、すぐに持ち出すことが出来た。今思ったけどお母さんはあの方に鍵を既に渡していたのね…。気が抜けない。


この家にも、もうさよなら。…家が無くなるって事は私や家族が集まる場所は2度とない事を表している。

今までありがとう。
さようなら。

心の中で今まで感謝をし、家から去る。


「おかえり。鍵は預かるように言われてるから貰うわね。」

そう言われて鍵を渡す。
車のドアをパタン小さくしめてから。

そして車は再び私の新居を目指して走り出す。


「そういえば私の名前言ってなかったわね。どうせお母さんからも聞いてないでしょう?」

その通りだ。
母は迎えに来てくれる方の
名前も言わずに
海外へ行ったのだ。
それは父も同罪だけれど。


「私の名前は跡部かすみって言うの。よろしくね。」

かすみさん…
綺麗な名前。
確かに花の様に
容姿も綺麗だもの。

「太陽ちゃんの学校悪いけど転校してもらうわね。今までの中学は家から遠すぎるからね。あ、まぁ息子が同じ学校は嫌だって言ってね。女なら尚更だ、とか言われちゃって。あの子なりに考えてるんだと思うけど…。」


………息子!?
息子さんの事はよく分からないけど。

学校が変えられる事は
予想はしていた。
でも…


「お金とか、かかっちゃうんで大丈夫です。遠くても自転車で…」

「だめよ!太陽ちゃんにそんな不敏な思いさせられないもの!」


お、おぉ〜。
なんて凄い人。

私にはそんな価値無いのに…。


「もう手続きも済んでるから。」

「へっ!?」

もう…ですか?
早…過ぎません?





色々と世間話を含めてお話をしてると分かった事もたくさんある。

この方には私と同じ年の息子がいる事。夫さんとの結構までの話とか。





私は話してたつもりが知らないうちに眠っていた。どうやら昼のテニスが効いたらしい。久しぶりにあんなに激しいテニスをしたから体には堪えたんだと思う。

目を覚ました時には車の中から大きいお城、に近いような家が見えた。

日本にはこんなに大きい家もあるのか、と多少感心していた。

「太陽ちゃーん。着いたわよ、起きて?」

起きてます。
起きてますが



このお城?ですか!?


「…えぇ!」
















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