帝白物語 第1章
incident2
『優勝、氷帝学園中等部』
一方の跡部率いる氷帝はもちろん都大会への進出を決めていた。
正レギュラーではない人達で。
「よう、跡部。」
「…忍足か。」
「最近妙に考え込んでるな。」
跡部はあまり人に心配はされない。というか跡部が表に出さない。だから気付かれる事もないのだ。
だけれど忍足は別。
忍足は何故か鋭く、跡部が表に出していないつもりなのにバレているのだ。さすが氷帝の天才、と呼ばれるだけある。
いつも傍にいる樺地はというと気付いていてもあえて言わない。それが彼のやり方。
「テメェにはバレてるって訳か。」
「分かり易いんや」
他の野郎は誰も気付いちゃいねぇよ、とツッコミを入れたくなったがそれは我慢した跡部。
だが、次の言葉にはさすがに黙っていられなくなった。
「最近の跡部…何かキモいんや。」
「……は?」
跡部にしてみればついつい声が裏がってしまう程の言葉。
正直、跡部には『キモい』という言葉は本来不適切なもの。
顔も良し、性格はなんだかんだで良し、皆を率いる力、そして運動神経も抜群に良い。非の打ち所なんて全くないハズ。
それなのに忍足の目に映る跡部はどこか妙なのだ。
最近の跡部は確かに機嫌がいい。だけれど、何か寂しそうなのだ。
こんな事を言うのは忍足だけだろうけれど…。
「誰がキモいだ…」
「んで、どないしたん?」
跡部の反抗もなんなくスルーされ、少し複雑な気持ちになったがとりあえず太陽が来た事から今までの事を忍足には話すことにした。
「へぇ、跡部の家に…」
「お前顔がニヤけてんぞ。」
「失敬。それで跡部がキモくなったんわその太陽ちゃんが理由って事か…」
すべてを見透かしているように話す忍足が恐ろしい。
跡部には別に太陽が来たからどうにかなったとかそういう訳でなはない。
だけれど太陽が来る前の生活に比べたら今の生活が楽しくなったのは跡部にとっては認めたくないことであるが、これもまた真実なのだ。
「今度跡部ん家に行って太陽ちゃんに会わな。」
その言葉を発する忍足はとても嬉しそうで恐ろしい。
忍足だけは味方につけておこうと思った跡部だった。
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