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帝白物語 第1章
incident1


『第四試合(シングルス2)を始めます』


『青学、越前』

『不動峰、伊武』






リョーマ君の試合…。


何が「俺の試合はちゃんと見ててよね」だよ…。


そんな事言われたら
目離せないじゃん。




リョーマが選んだ効き手は右。


どうやらあのサーブを打つらしい。



「ツイストサーブ!」


青学の1年生がそれはもう嬉しそうに声をあげる。

このツイストサーブを打てる者は珍しい。

このサーブを簡単に返せるハズもなく1ゲーム先勝。


だが伊武も黙ったままではいない。

伊武のサーブ…それは、




―パンッ―


「ツイストサーブ!?」


そのままそっくり返してきた。


そろもぼやきながら。

なんとも聞きがたい事か。




「キックサーブ…?」


太陽の後ろにいる1年生が何の事かと疑問を抱く。


その疑問に答えるのは乾。

ツイストと何が違うか、と言ったら対した事は違わない。

呼び方が古いか、新しいか、簡単に言えばそれだけである。



リョーマはこのサーブを決められたにも拘わらずに笑みを浮かべている。



「君さぁ…まだ何か隠し持ってるでしょ?」

リョーマは伊武に聞かれると今よりもニヤッと笑い「当たり」と言ってラケットを左に持ち替える。


今の光景を見ていた人達は誰もが驚いている。




「リョーマ君確かに…左利きだったよね。」


ツイストサーブの凄さに青学の一部までも忘れていた。



そこからはまたリョーマが攻め立てている状態で試合が進んでいった。


だが一瞬だけリョーマの動きが止まった。

追い付いてはいたがボールを返す事が出来なかった。

太陽はその異変に気付きすぐに確認しようと乾に聞く。

「乾…」

「なんだ鏡見。」

「相手のあのスピンのかけ方…」

「……?」

「あのせいで…筋肉が一瞬マヒしてる!」

太陽は見極めていた。


「…なるほど。」


スライスとトップスピンを交互に繰り返される事で筋肉が一瞬マヒするのだ。



「鏡見…お前は。」

乾でさえたった今気付いたのだ。


太陽が既に気付いていた事に多少悔しさを覚えることになった。





その頃試合は…

「あぶないー!!」


ラケットが折れてリョーマを目掛けていた。





「…っ!」

やむを得ず試合は一時中断。

その怪我を急いで太陽が手当てをするも流れる血が止まる事はない。


「リョーマ君…。」

「…大丈夫っス」


左目の眼球を傷付けていないにしても伊武を相手に勝つ事は難しい。


「越前ー、折れたラケットはしまっておくぞー!」

桃城がもう使う事はできないラケットを片付けていた。


「桃先輩…代わりに新しいラケット1本持ってきて下さい。」


「!?」


越前の言葉に皆が驚き、そして反対する。それはもちろん太陽も。


「そんな怪我しておいて!!」

「太陽先輩は俺が負けると思うの?」


ずるい質問だ。


太陽は口を閉じ、リョーマもため息をつく。


「太陽先輩に信じてもらえないなんてね。」

「そうじゃない!」


ただ…無理をしてほしくないだけ。


そう言いたいのに…どうして私は言えないんだろう…。


「分かってるって。いいよ、勝つから。最初に言ったよね?ちゃんと見ててよ。」


太陽には不思議だった。どうしてそこまでして勝ちにいくのか。

怪我までしてテニスをやろうと思うのか…。



「太陽、救急箱貸しな」

顧問の竜崎先生だ。

この場合は顧問として試合を止めるべき。

だが竜崎はリョーマが試合を棄権するつまりなどさらっさら無いことを承知している。


その為、止める事はなくリョーマの手当てをする。

何やら傷薬をつけてガーゼを貼る。


「15分しかもたないよ。」


竜崎先生はそう言って試合に出る許しをだした。

桃城から新しいラケットをもらい試合に行こうとした。


「越前…」


大石が行かせないと手を出した。

その様子を見た手塚が
「10分でケリを着けなければ棄権だ。」それだけ言ってベンチに腰を下ろした。



大石も手塚の言葉に渋々納得して「無茶はするな」と伝えた。

「充分!」






リョーマは先程にも増して怪我人とは思えないほどのいい動きをしていた。



「左目がふさがってる状態であんな…」

太陽にはどこからあんなに鋭い動きが引き出されてくるのだろうか、と不思議だった。



試合を再開してからはリョーマが試合を制していた。


二刀流と言ってはラケットを起用に持ち替えてボールを操る。

そしてトップスピンを出させまい、と伊武の正面にボールをだす。


ここまで器用にテニスを出来るものなのだろうか。


試合はもちろんリョーマの勝利。
手塚にまわる事は無かった。


『地区予選準優勝、不動峰中学校そして…


優勝、青春学園中等部!』

この2校が都大会出場となった。

握手をする両校のチームはお互い警戒の気持ちを秘めていた。


…だが中学生にして大人な握手だった。






「リョーマ君!」

「……太陽先輩…?」

試合が終わってすぐ様にリョーマの元へと駆け付ける。


ひとつは疑った訳じゃないという事だ。

「私リョーマ君が負ける訳ないってちゃんと思ってたよ…?」


「当たり前。」


そしてあと一つ…聞きたい事ては。

「…どうしてそこまでしてテニスを??」


この先輩は…大事な事を失いかけてるんだ。

リョーマは直感的にそう感じた。

「なんでって…楽しいじゃん。テニス」






太陽にはその言葉が胸に響いた。

そして忘れていたのだ、あの過去からテニスを苦しいものだとしか思えなかったから。



テニスは楽しいものだという事を…。














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