帝白物語 第1章
immensely6
コートに向かう途中、太陽たちはまた面倒な輩に捕まっていた。
「ったく!人の靴踏んでんじゃねーよ」
桜乃が目の前にいる男の靴を踏んでしまったのだ。
さっきから男は「あ〜あ、マジ激レアなのに」とかぶつぶつぼやいている。
「謝ってんだからもういいいじゃない!」
杏が桜乃を庇う。
それに対して男が出した行動とは
―パァン―
杏の頬を思い切り叩いたのだ。
今まで「相手にしなきゃいい」と思っていた太陽もさすがに信じられない、と怒りを表す。
「いったぁ!もう怒……っ…た!」
気の強い杏もカッチンときたようで怒鳴りだしたが最後の方は…唖然としていた。
何故ならば太陽がやり返しに男を思いっきり殴り、そして倒していたからだ。
「女に手ぇあげるなんて最低!!靴なんてまた買えばいいでしょ!?だいたい綺麗な事はここじゃあ意味がないんだよ!」
太陽の言っている事は最もだった。
靴が綺麗だということは、磨いていたりするのかもしれないが努力をしていないという表れとしか思えない。
桜乃も杏もまさか男を殴り、そして倒してしまったなんて驚く以外できなかった。
「太陽先輩じゃないっすか!はは!いいモン見せてもらいましたよ。」
聞き覚えのある声だと思い声の主を見るとそこには桃城がいた。
「…桃ちゃん?」
「俺が殴ろうと思ってたのに負けちゃいましたよ!あ、タカさんの病院行ってくるっす。」
高笑いをして桃城はそのまま病院へと向かっていった。
「太陽…?って3年なんですね…」
杏が全く関係の無い事を今更聞いてくるもので太陽は多少腰抜けた。
「ならやっぱ呼び捨てなんてできないわ」
桜乃にとって先輩を呼び捨てなんて命を捨てる程怖いものでそんな勇気は無い、と思うのだった。
「桃ちゃんが抜けたって事は…」
試合のキリが良い、という事である。
そこに倒れてしかも気を失っている男をそこに放置し太陽は急いでコートに向かうのだった。
「神尾くんが…。」
試合は3人がついた時にちょうど終了した。
海堂の勝利で。
太陽は即座に海堂の元へと駆け寄りスポーツドリンクを渡す。
「先輩…随分遅かったすね。」
海堂に睨まれながら言われ太陽は申し訳ないと思いながら言った。
「…ごめんなさい。」
その姿を見て笑っていたのは、ほぼ全員。
ほぼ、というのは手塚が入らないから。
いつでも表情を崩さない、こんな時くらい崩してもいいのに、と思うのは当たり前だった。
太陽に置いてかれた杏と桜乃は自分の学校をお互い見つめているのだった。
杏の思いはまさか神尾が負けるとは思っていなかったこと。
桜乃の思いは青学が勝利した事の喜びである。
「太陽さん…すごいわね」
「はい…あのリョーマくんも笑わせてしまうんですから」
桜乃のこの言葉には憧れの意味も含まれているのであろう。
「太陽先輩、俺の試合はちゃんと見ててよね」
リョーマは太陽にそういうと一瞬ニコッと笑ってコートへと向かった。
「リョーマ君が…笑った」
太陽はその笑顔がなんとも印象的に残ったのだった。
この時リョーマ君の精神力の強さを見習うなんてね…。
私は堂々と楽しそうにテニスをしている彼に憧れる事になった。
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