[携帯モード] [URL送信]

帝白物語 第1章
小さい少年

待っている間何をしようか…。

対した荷物は段ボールに詰まっていて、服などは既にバックに入ってまとまっている。

「こういう時には…散歩かな。」

時間もまだあるし、散歩位なら大丈夫だろう。

決めたらすぐに行動!

では行ってきます。


服はジャージ。いかにも女を捨てている状態。

今の時間は朝8時、曜日は日曜日。

ランニングと思われれば可愛いげのないこの服もオールオッケー…?


ぶつぶつ独り言を言っているとあまり来たことのないような場所だと気付く。

「どこ?ここ…」

辺りを見回しても知らない公園だけだった。

犬の散歩をしてる人しか人間は目に入らない。知り合いがいないだけマシである。迷っただなんて…恥ずかし過ぎる!


「……?」

どこからか何かの音が聞こえる。


定期的になる何かの球の音が。

「テニス…」


近付いてはいけないと感じつつ、どうしても足は音の元へと歩いていく。



テニスボールを打って心地良い音を鳴らしていたのは帽子を被っていてあまり背の高くない、青と白のジャージを着た男の子だった。


「あんなに小さいのに…」

私の僅かな独り言が彼の耳に入ったのか、いきなし壁うちをやめてしまった。


やばっ。
聞こえちゃった…?


多少怯えながらこちらをチラリとも見ない男の子に何を謝ろうか考える。

多分私の方が
年上なのに
なにを
怯えてるんだろ。


「アンタ…なに?」

顔も見せずに壁と向き合っている少年は怒りが篭っているのか篭っていないのか…

私に言葉を投げ付ける。


「…なんだかいい音だったからつい…。」

少年はその言葉を聞いてからかこちらに顔を向けた。

少年は綺麗な顔をしていて…かっこ可愛い感じだった。

「テニスやったことある?」

「…ちょっと。」

「ならさ、今人待ってんだけどゲームの相手してよ。」







…はいっ!?





何か幻聴が…。


「聞いてんの?ゲ・ー・ム!」

おっと?
幻聴ではなかったらしい。

ここは冷静に
断らなきゃね。
よし、決めた。

「…ラケットもないしコートもないじゃん。」

「俺2つあるし、コートもある」
右手のラケットをもった手は上にあげ、もうひとつの空いている手をひじを曲げられ後ろを指している。


えぇっ!?
ガチですか?

「あ、私急いでるから」

なんとか逃げだそうと試みるが…。

「とっさについた嘘って分かりやすいよねー。」


私の嘘なんてバレバレだったらしい。


ここは早くやって帰ろうじゃないか。

もしかしたらお迎えだってもう来てしまうかもしれないんだ。


もう考えるより行動だよね?
「…いいよ、早くやろう!」

「そうじゃなきゃね」












私達ふたりはコートに向かい歩き出す。


テニスには関わらないと決めた。なのに近くにあると、手に届く場所にあると触れたくなる。

玲也からあれだけ大好きなテニスを奪ったから。


玲也…ごめんなさい。

「3ゲームマッチだよ」
「分かったよ…」

ラケットがクルクルと回り始める。
「私はラフ」
「ならスムース」

―カラン―

「もらったよ。」
「私いつもサーブだめなんだよなぁ」




ため息をつきながら受ける体勢をとる。

「これとれる?」
口元をニヤリと上げてサーブトスを上げる。

気持ちは緊張でドキドキしていた。
そう、この緊迫感が好き。取ってやる、となるから。絶対に勝ちたいとなるこの気持ちが生まれるから。



「15−0」

え…。

ボールが…。

「ツイストサーブ」

いきなり…
そんなサーブかよ!

「見た事あるジャージ…。青学の…」

「越前リョーマ、覚えておくといいよ」


名前じゃなくてジャージ…。


まぁ…いいや。

青学のレギュラージャージを着ているって事は…。

かなりのやり手なはず。

「1年生?見た事ない。」

「そうだよ。…早くやろーよ。」


生意気なガキ…。


「いーよ…!」


―パァン―

「!?」
「よし、取れた。」

―パァン―


リョーマくんがいる逆のコースを狙う。

だけど…彼の足はそれを読んでいたかのように走りだしている。



でもね…。


私だって…そんな簡単に取らせる球を返したんじゃないのよ!?


「っ!?」

ラケットに当たった球は一気に回転がかかり私の元へとボレーを上げる形になった。

「次は私の番だよっ!」
―バァンッ―


私のスマッシュは見事にサイドのオンライン。

やった!
私だって馬鹿に
されっぱなしは
嫌だもんねー!




「…あんた…何者?」

達成感を噛み締めていたのに…。さっきより低い声で疑問を聞かれた。






なにって…

「ただの女の子!」

笑って答えた。













3/7ページ


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!