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帝白物語 第1章
immensely3



「乾…?」

気が付けばすぐ隣には乾が立っていて何か口にする事も忘れていた。

「意外だったな、まさか柿ノ木が負けるとはな。」

そう言う乾の手には既にデータがまとめられているであろうノートを開いていた。


「監督も兼任している部長の橘が、鍵を握っているようだな」


『橘…』



気のせいかな。


「そろそろ試合が始まる…」


太陽はコートへと進んでいく。


「何かありそうなのは…君もなんだよね…鏡見。」


消えていく太陽の姿を見て明らかに怪しげな微笑みを見せて呟く乾だった。


最初の試合はダブルス不二とタカさんペアだ。

最初のこの試合は先の試合の志気をも左右させるもの。ここは何とか一勝欲しい所だ。


試合は始まってからどちらとも引く事の無いすごいラリーを続けていた。


「すごい…。さすが。」


感心をしている太陽は更に驚く技を見る事になるなど予想もしていなかった。





「でたぁ!不二の三種の返し球(トリプルカウンター)のひとつ!」

菊丸の喜び、そして感心の声が発生させた。


「15ー0」










「つばめ返し。」





さすが青学の天才。

不二周助。



球を弾まさせない、なんてね…。




不二の打った球は弾まないものだった。

相手のトップスピンを利用して、自らも同じ方向に回転を与えたスライスカウンターショット。


そんな球は相当な技術が無ければ打てないもので、不二周助だからこそのものだ。


不二の決めた『つばめ返し』からは流れが変わり始め青学が押し始める状態になった。



「このまま勝てるといい…けれど」


「そうもいかないだろうね。」


まさに太陽が言おうと思っていた台詞をリョーマに取られた。



「……。」


台詞を取られた複雑な気持ちあれば共感の気持ちもある太陽であった。


「…ここから何か出そうだね。」



予測をしていた直後、部長の橘が石田に何かを合図していた。


「なに…?」

太陽が気付いた時には時既に遅い。



―バンッ―



テニスボールを打つ音とは思えない誰よりも力強い球を打った。


「あんなの取れる訳ない!」
だけれど今のこのポイントを落とすと失うものは大きい。


不二はその事を分かっている、その為あの力強い球を返しに向かう。

だけれど不二の力では多分返せるハズはない、力不足なのだ。




「どけ!不二!」


それを庇うようにタカさんが打つ。


まさかそれは返せると思っていなかった皆は太陽を含め全員が驚いた。



だがまだ球は生きている。


タカさんが打った球を打ち返そうと相手の石田はもう一度あの力強い球を返そうと構える。


だが石田のラケットのガットに穴が空いていた。

一回目に打ったあの球『波動球』に耐えられなかったのだろう。


もしこの時、石田のガットに穴が空いていなければ危なかった。


だけれどタカさんが必死に返して決まったセットの代償は大きかった。




―カタンッ―


「イテテっ!」


「僕をかばったんだね。」


タカさんは打った時の衝撃で手を痛めていた。
骨にヒビが入っている可能性があり、すごく腫れていてとても試合を続行できるような状態ではない。


「タカさん!」


太陽は首を横に振りこれ以上の試合は無理だと判断。

それを伝えた。


「…審判、棄権します。」


仕方が無い事だった。

タカさんは断固反対、という意思を表していたが腕が今の状態では使う事ができないのだ。


「す、すまん。」


「大丈夫、みんながいる。」


タカさんにそう言って励ますしかないのだ。

青学の信頼はあつい、という事に気付く太陽だった。


「タカさん!手みせて!」


とりあえず冷却スプレーで応急処置をするが太陽はア然としていた。

波動球…。
人の手を壊してしまう程なんてどれだけ怖いのよ!


「今から病院!骨に異常あり、だからね!」

「ごめん…。」

「なら早く治す!」


太陽は自分の処置では情けないが無理、判断して病院に向かわす。


タカさんを嫌々と連れていったが大事には至らない。


悪いと思ってるなら
早く治して皆に試合で
勝って返す事だよ、タカさん。



タカさんが病院に向かう中次の試合は始まった。















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あきゅろす。
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