帝白物語 第1章
past4
「ただいまぁ」
「おかえりなさいませ」
今までは凡人だった為こんな風に迎えられる事の無かった太陽でもさすがに毎日言われれば慣れてきた。
「ありがとうございます」
ついつい感謝の言葉を口にするのは慣れていなかった証拠。
「景吾は…?」
「景吾様でしたら1度帰ってきてからすぐテニスコートで練習をされていますよ。」
使用人の言葉を聞いて多少残念そうな表情を見せる太陽。
ここにきてから1ヶ月くらいたった私は家に帰ってからは暇になる事がよくあり、跡部といる事が多くなっていたのだ。
「…テニス…。」
さすがにテニスコートには向かいたくない。
もう関わりたくない太陽なら尚更だ。
跡部の所へいくのは諦めて部屋に足を進めていく。
部屋に戻り椅子にすとん、と腰を降ろす。
残念ながらここは跡部の部屋の隣。
跡部の事なら必ずテニスコートの近くの部屋を選ぶ。
その為太陽もテニスコートの部屋の近くになるのだ。
「景吾の…馬鹿。」
目をつむればテニスボールがラケットに当たってなる音が聞こえる。
いてもたってもいられず窓を開けてベランダへと行く。
「景吾!」
するとボールを打つのをやめて太陽の声がした方向へと顔を向ける。
「…太陽、降りてこい。」
相変わらず命令口調で俺様なやつだ。
「…ってかもうわざわざ下に降りるの面倒ー。」
そうここは2階。
だからわざわざ部屋を出て階段を下りて外に出てからテニスコートへ向かわなきゃならないのだ。
「バーカ。お前の部屋のベランダにもテニスコートに繋がる階段があるだろうがよ。」
「…??」
言われて見れば確かに左側には階段がある。
階段の先を辿って行くとテニスコートに繋がっている。
「お前の目はふし穴か。」
こんな階段何に使うかなんて分からないから!
「早く来い。」
跡部が呼ぶので太陽は降りる。
「…なによ。」
「俺様の相手しな。」
「…は?」
太陽の今の顔はきょとん、としている。頭の上に『?』マークを付けてあげるとよく似合う。
無理!!
何言ってんの?
215人の頂点に立つ景吾に勝てる訳なくない?
それに…もうテニスはやらない!!
「ほら。」
跡部にテニスラケットを渡される。
ラケットを握った瞬間。
あの事を思いだす。
『太陽!!』
『え…』
―キィィィ―
『や、…やだ!玲也!玲也!』
思い出したと同時に息が苦しくなる。
「おい!太陽!」
「や…だ。…」
跡部はびっくりしたように太陽に駆け寄って様子を見る。
「ちっ。過呼吸か。」
跡部は優しく太陽を抱きしめて背中をとんとん、と撫でてくれている。
「助け…っ。玲也…!」
「!?」
俺ではない…。
『玲也』と太陽は確かに言った。
原因はソイツか。
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