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帝白物語 第1章
past1



―パァーン―

いつもと同じ、練習が始まる。


日曜だと言うのに朝から練習だ。

つい欠伸がひとつ。

「ふぁ〜」

手をぐーっと上に伸ばす。伸ばした手が誰かに当たった。

その誰かとは…


「俺を殴るとはいい度胸だな。」


手塚だった。


「え!…手塚…。」

普段クールな彼の眉毛がピクリと動いたのは気のせいだろうか…。

「太陽…確か救急箱の中身が足りないと言っていたな?」


ま…まさか。

「今から走って買ってこい。」


「えぇー!!」


「30分以内だ。お前がいなくてはスムーズに進まん。」


時間制限には肩を落としたが、その後の言葉についつい口が緩む。


「…はいはい。」


じゃあ今から用意してダッシュで行ってきますか…。






部室に戻って治療道具を買う為の部費を取りに行く。


「あった、あった」


急いで書い出しに行こうとテニスコートを離れようとする。



あ…確かバス乗らなきゃ行けないんだよなぁ。



走ってって言われたけど…行きは上り坂があるからなぁ。



よし、帰りは走って行こうじゃないか。



「手塚ぁー?今から行ってくるね」


手塚に一応報告。

だけれど…あれは…。






「部外者はでていけ。」


え…?

誰…あれ?


ワカメ頭…。

なぁんか見た事ある。


でもいいや。


手塚が何とかしてくれるだろうし。






私は学校から出てバス停に向かう。


門を出て3分歩く所にバス停がある。


それまでの間は少しでも手塚に言われた事を守る為にダッシュだ。



「ふぅ〜!ダッシュとか久しぶり過ぎる。」


普段自分がどれだけ走っていなかいかをよく思い知らされる。


去年の今頃には…私も…。





「太陽先輩?」


「…あ!!」


リョーマ君でした。

今日は来ていなくて多分遅刻だろうとは部員の皆が予想していた。


「早く行かないと怒られるよー?」

「…分かってますよ。太陽先輩は今からどこに行くんスか。」


「買い出しだよ。」


この言葉を聞いてリョーマ君が私を可哀相な目で見ていた。


そんなに哀れまないでよね。

逆に悲しいわ。


「やべっ。早く行かないと。じゃ。」





きっと手塚に説教喰らうんだなぁ、とか思って小さくなっていくリョーマ君の背中を見つめていた。




しばらくリョーマ君を見ていると校門から山ぶき色の制服を着ていて、髪の毛は天然なのかパーマがかかった人が出て来た。


その人はきょろきょろ辺りを見渡すと私の方へと向かってきた。


その間にリョーマ君と何か揉めていた?のかはよく分からないが…。


「すいませーん。このバスって柿ノ木中停まります?」


初めて話す言葉がこれとは…。



「停まるよ。途中までだけど一緒に乗る?」

私が尋ねると彼は嬉しそうに答えてくれた。

「いーんスか?ありがとーございます。」


馴れ馴れしいような気がしたのは私の勘違いにしておこう。





彼と一緒にバスを待っていると私の方に顔を向けて「あ、そういえば」と何か思い出して私に聞いてきた。


「アンタ、青学のマネージャー?」


いきなり聞いてこられたからちょっとびっくりした為反応が遅れてしまった。


「…あ、うん。そうだけど…?」


「へぇ〜。青学がねぇ。…マネージャーを取るなんて思ってなかったな。」


葵の言葉が蘇る。

『今まで取ったこと無いんだよ』


その言葉が事実だと分かった。


確かに今まで取っていたら今ここにも残っているだろう。



「人の事を聞く前に自分の事を言うのが先なんじゃないの〜?」


「あ…失礼。俺は立海大付属中2年エース。切原赤也ッス。」


立海大…。


確か関東2連覇の学校だ。


「あ、バス来たみたいッスよ。」


―プシュー―

バスの扉が開かれる。


最初に私が入り、1番後ろの席の窓際の席に座る。


すると赤也くんも私の隣に当たり前のように座る。



何故…??

つい口がポカンと開いてしまっていた。


「そんな口まで開けなくても…。」


注意されてからようやく口が開いていた事に気付きそっと手で抑えて口を締める。


「どうせ途中まで一緒ならいいじゃないッスか。」


まぁ確かに。

もうどうでもいい。


「何でこんな時間に青学に来たの?1人であんなに堂々と偵察とかでは無いでしょ。」


「バレてました?バス間違えて青学に来たんスよ。」


なるほど。

だからついでに偵察って所かな。

根は単純かもしれないし。


「寝てたりしたらだめだよ?」


バスは私の目的地の停留所へと停まった。


「じゃあ、バイバイ。全国で。」

そう言って私はバスを降りる。







あのマネージャー。

いい度胸だね。

気が強い。


それに校門前のあの1年。


「へぇ…青学ね。」


赤也の顔が未来を楽しみにニヤリと口を緩めた。





待ってるぜ、青学。
















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