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帝白物語 第1章
行ってらっしゃい
気が付くと私は横になって寝ていたらしく体には薄い掛け布団が掛けてあった。

「お母さんかな…。」

なんだかこういう時に優しくされてもなぁ。まぁ、いっか。

いつまでも寝ていたい気持ちはいっぱいだったが一度目を覚ましてしまうとそうもいかずに結局起き上がる事にした。

窓から外を見ればいつも朝みるのと同じ光景が見られた。

「7時位かな…。」

そう思っていつものようにリビングへと足を運ぶ。

「太陽おはよう!」

すぐに私に気付いた様で私に抱き着いて来た。

「おはよう!太陽」

珍しくお母さんとは違う低い声に驚きその原因を辿ってみる。

「お父さん!?」

そこには半年ぶりに会った父の姿。

「久しぶりだな。もうすぐ行くからあんまり話ができなくて残念だが…。大きくなったな。」

ぽんっと頭の上に大きな大きな手を乗せられた。なんだかこんな行為久しぶり過ぎて照れ臭くなってくる。

「ちょっ、私だってもう中3なの!馬鹿にしないでよね〜!」


照れ隠しとバレバレだろうけど、これが私の性格なんだろう。素直じゃない、嫌な性格だ。
「すまん、すまん。つい久しぶりに見た愛娘だからな。」

私はお父さんとは全然会えなかったけど大好きだった。小さい頃はまだたくさん遊んでくれていたからその時のお父さんの印象のおかげだろうけども。

「じゃあ母さんと父さんは行ってくるからな」

「迎えの車はあと少しでくるから着替えておくように!」

「お母さん!急過ぎだからね〜。ホントにもうっ。楽しんで来てね、行ってらっしゃい」


手を振り扉を開け荷物を持ってでていく。家の家具はそのまま売るらしく置いたまんまだった。

でも…母と父の笑顔が気になった。なんだか最後の別れみたいな今までにない哀しい笑顔。

頭で考えるよりも体は既に行動を起こしていて先程閉まっていた扉を思いきり開けた。

「お母さん!お父さん!」

どうやら二人はタクシーに乗る寸前だったらしくギリギリ、という所だった。

「…どうしたの?」

お母さんが私に近寄って来て目を見ながら話を聞いてくれようとしてる。

普段ならば絶対に言えないけど、今日はいつもと違う事が気になって絶対に言わなくちゃいけない気がする。

後悔だけはもう、したくないから。

「…今回はどうして私を連れて行ってくれないの…?」


いつもなら何があっても必ず私を連れて行ってくれたんだ。どんなに遅くなっても「太陽を置いてはいけないからね」って。


「……太陽は、連れて行けないの。」

この言葉の理由が…分からなかった。

お父さんとお母さんは二人で顔を見合わせながら微笑んでいた。

「私とお父さんは二人でラブラブしたいのよ!ねっ?あ、渡した通帳にいくらか入ってるから困ったら使いなさい。」


なんだか流された気がする。でも今何を聞いても仕方がないような気がした。

「…分かったよ。行ってらっしゃい」

「「行ってきます!」」

次こそ本物の満面の笑顔を見せて口パクでばいばい、とかいいながら私が見えなくなるまで手を振ってくれていた。


「変なの〜!」


私があの時に行かないで、ってそう言えば何か変わったかなぁ?















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