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帝白物語 第1章
manager5



しばらくすると部長らしき人と顧問がこちらに向かって来ていた。



それに気付いた部員達が二人の元へと集まっていく。



ここは私も挨拶すべきだと集まりに行く。




皆の表情は堅くなり空気は先程よりも引き締まる。


部長を見れば思い出す。






今日の朝、職員室に連れて行ってくれる人だと。


じゃあ…あの人が。



手塚部長。






「以上だ!気を引き締めて練習に取り組むんだな。」


「「「ハイっ!!」」」

部員が口を揃えて大きな声を出して返事をする。




この団結力にはさすが、と納得するしかなかった。

これが頂点にたつべき人のまとめる力。


「それから鏡見、お前は残ってくれ。」


何で私の名前知ってるんですか、手塚くん。


「…はい。分かりました。」

この時不二くんの口がニヤリと笑っていたのなんて全然気付かなかった。










どうせ、練習の邪魔はしないでくれ。とか部外者は出てってくれ。とかそういう文句ばかりなんだと思っていた。


んな事言ったって…テニスを久しぶりに見たかったのは…事実だ。


言い訳なんてしない。




手塚は私を直視していた。それも丁寧に顧問の先生付きだ。


「許可も無しに勝手にテニスコートに入ってごめんなさい。それは謝ります。」


この雰囲気に私が堪えられるハズが無く私から口を開いた。

手塚はこんな時でも冷静だった。

「不二に許可を得ていたのだろう。ならば良い。それでお前をここに残した訳だが…。」



怒られる覚悟をしてグッと歯を食いしばる。



「我が男子テニス部のマネージャーにならないか。お前一人だけだ。」











はい??
い、いえいえ。
そんな滅相もない。



「私にそんな大役は…。」

「お前さんはしっかり気を使う事もできるみたいだしいいじゃないか。手塚が自ら誘うなんてそう滅多にないぞ。」




それは分かってます。
この人が難そうなのは見れば誰でも分かります。





でも私がテニスに…関わるなんて…。




そんな事許される訳が無い。




「まぁ考えてみてくれ」

顧問の先生が私の頭をポンッと叩いて私の横を通って行った。




手塚もついて行くようにコートの中へ入ろうとする。


「今日は見学に来たのだろう?」




そうでした…。
今日だけは…。



「ありがとうございます。」



私も続いてコートの中へと入って行く。


みんなの視線を浴びながら。



手塚は不二くんの元へと行く。

「期待するぞ。」

「手塚は分かってくれると思ったよ。」

クスッと笑い練習を再開させる。







「鏡見、と言ったな。さっきのスポーツドリンク…。」


「他のとは違う事気付いた?あれは私の特製!今日はたまたま持ち歩いてたの」


「ほう、いいものだ。俺は乾だ、よろしく」

「よろしく」


まさか乾くんにそんな事言われるなんてね。


データテニスの乾くん。







「君はテニスの事をよく知っているようだな。」

「全然。かじった位ですよ。」


「それであんなフォームが身につくものか。」

「データくんには敵わないね。」




この人にはお見通しかな。私が誰なのかは知らなくても1回テニスを見られてるんだもん。


「越前相手にあそこまでできるなんてな。」

「まぁ…たまたまだろうけど。」




二人で話しているうちに練習は段々と本格的に。
「では、私も練習に参加してくるよ。」



乾はすぐに参加して馴染んでいった。



男子の練習は女子とは比べものにならない程の練習だった。


私の今までの練習が甘く見えたのも仕方がない。




男と女の差とはここまで凄いものなのか。









私はただただ真剣に練習に見入っていた。

ただ時折なくなったスポーツドリンクを見つけては作っておいておいた。


スポーツドリンクと一緒にタオルも付けて。




彼たちにとっては長く辛い練習だったかもしれないが私にとってはあっという間な時間だった。


練習が終わると同時に皆に話しかけられる。

まるで今日の朝のように。

「俺の名前菊丸っていうんだ!よろしく!」

「俺は大石。よろしく。手塚がまさかな。」

「次オレオレ!桃城っす!よろしくお願いしまーす」


「俺は河村って言うんだ。よろしく…。」


おぉ、なんか初めて引き気味にされた気がする。

新鮮だ…。


でも一人私には言い寄らない人がいた。

海堂くんね。


「俺はお前なんか認めねぇからな。」




そう聞こえた。






「おい!マムシ!てめぇ!」

桃城くんが気に入らなかったらしく海堂くんに突っ掛かる。





「やめて!」


私のせいでケンカなんて絶対にやめてほしい。

私なんかそんな価値もないんだから。


「桃城くんありがとう。」



「太陽〜。マネージャーやらないの?」

菊丸くんが私に甘えるように尋ねてきた。猫みたいで可愛いなぁ。



「まだ考え中。私が入ればさっきみたいにチームを割らせてしまうかもしれない。」




そんな事だけは絶対にさせたくないから。




「でも…負けたくは無いんだね。認めてもらいたい。」


私の言葉を聞いてみんなニカッて笑ってくれた。


これが私の救い。


「ありがとう、みんな。」

転校してきて1日なのに、私を必要としてくれる人がいるなんて…どんだけ心強いことか。



「今日の練習は終わりだ!」


手塚の一声でテニス部の今日1日の練習は終了した。










私はマネージャーになる事を考えていて、また誰かを傷つけてるなんてどうして気づかなかったのかな。




私って本当馬鹿。










continue



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