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帝白物語 第1章
manager4



―放課後―



「太陽は何か部活入らないのか?」


「はっ?え?私は入らないよ〜!葵は何か入ってるの?」

私たちは短い時間でびっくりする位仲良くなれた。


私は呼び捨てで呼べるまでにね、これってすごいよね?



「私は女子テニス部。これでも部長なんだよ。」


え…


テニス?


私はある意味運命だと思ったよ。


ここまでテニスに関わらなきゃいけないなんてね。


「すごいね、部長だなんて。」



私もかつては…


部長だったよ。





「まぁ、努力しましたから!」

葵はサバサバした性格でみんなをまとめる力もあって、確かに上に立つべき人だと思う。


テニスができるなんて、正直うらやましいよ。



私だって本当は…










「太陽?どうしたの?」

「えっ!?あ…ごめん。」

「まぁ、いいけど。今度一緒に遊ぼね。じゃあ私は部活あるから!」


葵は走ってテニスコートへと向かって行った。


さすが部長。
遅れる訳にはいかないからね。



「ふぅ…帰るかな。」


葵も部活に行った事だし…ね。


私は校門へと歩いていく。


「あれ??太陽ちゃんじゃないか。」


「え…。」

「僕は今から部活なんだ。」


不二くんだった。


テニスウェアを着ていてやる気十分という姿勢だった。


「頑張ってね!」






不二くんは何かを言いたそうに私を見ている。



「あんなにテニスが好きなのにね。君は。」


「っ!?」


「君は越前とあんなにいい試合をしていたじゃないか。楽しそうに。」



え…。

この前の試合を見て…た?


「最後すれ違ったの気づかなかったの?」



確かに最後に大勢の人とすれ違ったのは覚えてる。

まさかその中に不二くんがいたなんて…気付く訳がない。



「…っ。」

「見ていってみてはくれない?それだけなら大丈夫でしょ?」


見ていくだけなら、そう思って男子テニス部を見学することにした。






テニスコートに入ると一気に空気が変わった。

コートの外にいるのと中にいるのではこんなに違うものなのか、と思うぐらい。

「不二先輩!」

「あぁ、桃どうしたの?」

桃、と呼ばれた人が私の事を指さしている。

何で指まで指すのよ!


私でもアンタの名前位は知ってるわよ!

桃城くん!

「この女越前とやってた…。」

「あぁ、そうだよ。」



越前…ね。

名前は出て来るんだけどなんかムカつくヤツな気がする…。

私の試合やってた相手だよね。


顔がイマイチ思いだせな…。


あ!!



思い出した。






私が職員室にいけなくて迷ってる時に私を馬鹿女呼ばわりしたヤツだ……。


「俺がなんすか?不二先輩、桃先輩に……あの時の。」


「この前はどーも。リョーマくん。」

「職員室行けた?」

「まっじ、むかつくガキめ。」

「あん時俺の事忘れてた癖に。」

うっ…!!

そこは言わないでほしかった。


「う、うるさいわね!あの時は色々あったのよ。」

「あっそ。」


殴ってもいいですか?(笑)



「二人とも、もう始まるよ。」

不二くんと桃城くんの顔が私とリョーマくんを怪しい目で見ていた。


「「す、すいません。」」

二人同時に謝ったのは当たり前だった。


「太陽ちゃんはとにかくベンチに座ってな。」

「はぁ〜い!」

少し頬を膨らませてベンチへと黙って座る。


一人一人が体を温める為のアップをし始めた。


テニスボールの心地良い音。

この音だけはいつまでも嫌いにはなれない。


「…うん。いい音。」




ただ私は何故か大人しくできなくなり立ち上がる。


テニスをしてる皆は集中していて全く気付かない。

レギュラー陣以外は。



「ここにいるならね、せめて役にたちたいもん。」


私は部室を借りてストロボを取りに行く。

せめてスポーツドリンクぐらいはね。


「ったくあの子も大人しくできないタイプだねー」

「菊丸…。なんだかんだ言ってお前も気になってるんだろう?あの子を。」

「だってあんな可愛い子だもん。当たり前だよー」

こんな会話の中でも早い球をお互い打ち合っている。しかも軽々と。


「違うだろ。テニスの方としてだよ。」

「さすが大石!まぁね!あ〜あ、あの子がマネージャーになってくれればなぁ。」

「そんな事手塚が認める訳が無いだろう。」

「はぁ。そうだよね」

二人は結果は分かっていようとも何故だか彼女なら大丈夫な気がした。







「よいっしょ、と。」

とりあえずこれで人数分だよね。

こっちがレギュラー陣ので、反対側が他のみんなの分と。



―ガチャリ―


ドアを開けてスポーツドリンクを置く。


「とりあえず目立つ所に置けばいいよね。」


部員の皆はウォーミングアップが終わったようで私の元へと集まってきた。

と、いうよりスポーツドリンクの場所にかな?


「太陽先輩でしたか?いつの間にこんなたくさんのスポーツドリンクを?」

レギュラー陣ではない部員が私に聞いてきた。



「みんながアップしてる間に決まってるでしょ?余計な事した?」


そこに不二くんが集まってるところに当然のようにやってくる。


「…いや、おかげで1年生のみんなが気を使わないで練習できたみたいだからいいよ。」

「不二くん…。」


何だか不二くんには試されているような気がする。

何を試されてるのかは分からない。




一方、違う場所ではこんな話合いがされていた。



「ほう、珍しいな。不二が誰かを連れてくるなんて、まして女の子とはな。」


「竜崎先生。あの女は前に越前と試合をしてた女ですよ。」



ため息をついて竜崎はまたか、と呟いた。


「だがあの女はどこかで見た気が…。」


「知り合いなのですか?」

「いや、そういう訳ではないんだよ。」



竜崎と一緒にテニスコートを見ていたのはもちれんテニス部の部長の手塚。

手塚は不二が太陽を連れてきた意味が分かってるのだろう。

わざと不二が彼女を見せるようにしているのなんてとうに気付いていた。



「マネージャー…か。」


竜崎は驚いた様に手塚を見上げる。



「珍しいな、マネージャーをとるのか?今まではいらないと言っていたのに。」


「いえ…不二が連れてくる程なので。」

「フッ、私は大賛成だよ。一人位女の子がいてもいいだろう。それに…何かありそうだしな。」


何かありそう、それには手塚も共感していた。


越前と試合をしていた時はあんなに楽しそうに試合をしていたにも関わらず試合が終わった瞬間、何か罪悪感に襲われているようだった。

一体彼女が背負っているものはなんなのか。


「竜崎先生がそう言うなら。」


普段は絶対に認めない手塚だが、彼女の性格を多少知っている手塚は役に立てばそれでいい、そう思ったのだった。





もし役にたたなかったその時は…











切り捨てる。












それだけだ。












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