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帝白物語 第1章
manager3



私はいつの間にか景吾の膝でぐっすり睡眠をしていたらしく、学校に着くのが早く感じたのは当たり前の事だった。



「おい起きろ、太陽。」


「まだ…あと5…分。」


薄く開いた私の目から景吾が眉毛がピクリと動いていた様に見えた。

どうかそれが幻であって下さい、私は無意識にそう願っていた。

だがそれは虚しく彼は車の中なのに彼にしては大きな声を出した。


「もう着いたんだよ!馬鹿女、さっさと起きやがれ!」


この一言で私の目がパッチリと冴えたのは言うまでもないだろう。


「わ…分かったよ〜!景吾のケチ!」



私なりにこういう言い合いでの別れ方は好きではないので一応ちゃんと「行ってきます」と言ってから学校へと向かった。



車の中では景吾がため息をついているのは予想が出来た。

でも私はそこでもうちょっと彼の優しさに気づくべきだったんだ。


「景吾様は優しい方ですね。」


「何が言いたいんだ。」


彼が鋭い目つきをして運転手を睨む。
だけれど運転手は全く怯む事はない。それはもう慣れた、とでも言うように。


「太陽様の為にわざわざ青春学園の方から行く様になさるなんて。」



「…フッ。車を出せ。」

「了解致しました。」



彼の乗った車は走り出した。次こそはしっかりと氷帝学園を目指して。











「最初は職員室に行かなきゃね。」


グッと拳を腰の横で作って気合いを入れる。

昨日でしっかりと行き方は覚えたハズ。

さぁ行こうではないか!










校舎に入って15分。


「ここどこーっ!」


私には分かった事がある。


今まで住んでいた所は慣れていたせいか迷うことは絶対に無かった。

だが新しい場所に来た瞬間これだ。


いこーる方向音痴ということ。


こんな悲しい事できるだけ気付きたくはなかった。




「おい、どうした?」

「え…」

眼鏡をかけた男の人が私に救いの手を差し延べてくれた。


これも3回目、こちらの人達は声はかけてくれるんだよね。

「道に迷ったのか?」

「うっ…。まぁそんな所ですね。」

「どこまで行きたいんだ?」


「職員室です。」


本当に私馬鹿。

早く覚えなきゃマジでヤバイ。

これはなんとかしよう。

移動教室なんか友達がいなかったら私なんて全ての授業が遅刻になってしまう。

それだけは裂けなければいけない、私でもさすがにそれは分かった。


「行くぞ。」

「え…!?連れてってくれるんですか?」



彼は「それ以外に何がある」と言って私を職員室まで連れて行ってくれた。

最初に話しかけてくれたチビガキとは大違いだ。







彼のおかけで無事に職員室に着く事ができた。

本当に助かった。

「先生…ですよね?ありがとうございました。」

「……。」


彼は急に渋い黙り込んだ。
私は何か言ったでしょうか?




彼が黙り込んだ理由はすぐに分かる事になった。

そうそれは


「俺はここの生徒、だよ。」



という事だったからだ。





「うっ…すいません。」


真実を聞いて謝る事しかできなかった。

せっかく親切にしてもらったのに…私は何て失礼な事を…。


「いや、いいんだ。よく間違えられる。」


よく間違えられるんだ。
良かった、私だけじゃない(笑)

でもマジで、かなり年上に見えますよ…。


「ありがとうございました。」


「ああ。」



私はその後職員室の中へと入っていった。

彼は多分だけど教室に行ったんだと思う。

そろそろ授業始まる頃だと思うし。


「あ!太陽ちゃん!やっと来た。今から探しに行こうかと思ってたのよ」


「いや、また迷ってしまいまして…。」

「そうなの?まぁいいわ、あなたのクラスに行くわよ。」


先生はもう行く気満々だった。私は今ようやく目的地に着いた所だったのに…。



私はまた階段を上るんですね。足が辛いんですが…。


「はい、ここがあなたのクラスよ。」



1ーD


さっき廊下を見て分かった事がある。

この学校は一学年12クラス、という事。


これが私立、なのか??

私の前の学校では多い学年でも5クラスだった。


みんなの事を覚えられるのか心配になってきた…。


―ガラガラ―


「はい、みんな座って。今日は噂の転校生が来てるわよ」


ちょ、ちょっと待って!
まだ心の準備が…。


仕方なく私も先生に続いて教室に入る。


「ほら、自己紹介しようか?」


周りのざわつきが気になる。

こういう嫌な注目は…苦手だ。


「鏡見 太陽です。よろしくお願いします。」


精一杯の挨拶だった。

「って事だから、みんな仲良くねー!席はあぁ、不二君の隣で。」


不二くんらしき人が手を挙げてここだよ、教えてくれていた。
そのおかげで私はすんなりと席へ座る事が出来た。




「ありがとう、不二くん」

「どう致しまして。」


あの不二くんの隣ね。


テニスを離れていた私からは徐々に昔の記憶が掘り出されて行く。



青学の天才とは…貴方の事だったね。


不二周助くん。



「僕の事知ってるんだ。」

「え…?」


「今そんな顔してたから。」



…また顔に出てたか。


この性格誰か直して下さい。



「あなたは有名人物でしょ??」

「いや、そんな…。じゃあ君もテニスをやっているんだね?」


…っ!?

やば…つい。


「ぜ、全然!ちょっとかじった位だよ。」


彼は一瞬目を薄く開いていた。だけれどすぐにその目は優しい目に戻った。


「そっか。」

「う、…うん。」


今の目…。
私何か言ったかな?



確かに自分を隠したけど…でも。





私はもうテニスに関わっちゃいけないんだよ…。


「あ、太陽ちゃん?委員会を決めるみたいだよ。」

季節はまだ春。

入学式が終わって、少ししかたっていない。


「太陽ちゃんは何か委員会に入るの?」


…どうしようかな?
委員会。
入って損はしないと思う。


こんな私だけど、一応本が好き…なんだよね。



「…図書委員になろうかな?」


「そうなんだ。」


何か聞いて得になる事があったかな?

この学校は委員会は男女で1人1人出るのでは無いらしい。

クラスで2人ではなく1人だけでいいらしい。


まぁこんだけ人数が多ければそんなにいらないわよね。


不二くんとはちゃっかり気が合うらしく時間も忘れて色々と話してしまっていた。

その為委員会決めなんてあっという間に終わっていた。

無事に私は図書委員になる事も出来たし、まぁそれでいいかな。

問題は休み時間だった。



「太陽ちゃん可愛いね!どうやったらそんなになれるの?」

はっ!?
可愛くないない!
目の錯覚だよ!


「ねぇねぇ、うちの部活に入る気は無い?」

いえいえ。
部活に入る気はございません。




人が集まる集まる。
私なんかに集まらなくてもいいのに…。

隣の不二くんはというと私を助ける気なんて全くなく笑ってこっちを見てるだけ。それもすごく楽しそうに。


私が少し苦笑いになってきた時だった。
私の机に手をついて声をあげてくれる人がいた。

「こらっ!引いてるよ?そろそろ迷惑がってんだからやめなさいよ!」

その女の子の注意を聞くと「ちぇ」とかブツブツと文句をいいながら周りの皆は私から離れて行った・


その女の子は髪が肩位まである子だった。


私の方に体を向けて
「私は葵っていうんだ。よろしく。」
挨拶をしてくれた。

「…うん…!」


なんとなくだけど、私はこの子とは仲良くなれる。そんな気がした。















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あきゅろす。
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