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帝白物語 第1章
encounter5


気を利かせてくれたメイドさんが私を部屋まで送ってくれると言ってくれた。

まだ部屋も覚えられなくて自分一人では帰れないのだ。




「すいません、ありがとうございました。」


言い逃げるように私は急いで部屋に入った。だって恥ずかしいじゃん!私めちゃめちゃ浮いてるって!


私なんかがこんなに凄い所に来ちゃいけなかったんだって。お母さんの馬鹿。




私はあの空間から解放された安心感でベッドに倒れ込む。

ふかふかてしていて眠りを誘われていた。


やばっ…
食べたばかりなのに
寝たら…太る。

この気持ちを最後に私は意識を手放した。










―コンコン―



「ん…。」


やば…。
寝てたんだ…。


「太陽様、夕食の時間ですよ。」


眠い。
なんでか眠い。

だけど…やっぱり迷惑はかけられないからね。


「は…い。」


寝ぼけ眼で精一杯の力を振り絞って起き上がる。



うぅ、肌寒い。ってか私制服のまんまで寝てたんだ。

あぁ〜あ。
グシャグシャだ。


「太陽様?」

「はぁ〜い!今行きます!」


―ガチャリ―
メイドさんはまた笑ってた。寝癖があるとか??


もぉいい!

気にしないもん!


「ちゃんと食堂今日で覚えますから!」


「頑張ってください。」


めちゃめちゃ可愛い笑顔で言われてしまった。


ここのメイドさん皆可愛すぎるでしょお。









「今日は景吾様もいらっしゃいますよ。」

「え!?マジですか?」


やっと会える!
ずっと会いたかった!
どんな人なのかなぁ?



食堂に入り既に座って待ってる人がいた。その人は私に背を向けている状態。

背を向けている人は跡部景吾さん。



席に座り顔見る。


そこには見た事のある顔。
顔をみた瞬間、すぐに分かった。彼がかすみさんの息子さんだという事が。




「あ…。」

「…お前は…」

「…顔そっくり。」


そう目の前にいる跡部 景吾。

昨日会った父親とめちゃめちゃ似ていた。

「なんか文句があんのか?」


「別にないけど…。口…悪っ…」

「ほぅ、随分と生意気なヤツだ。」



あんたに言われたくないわ。

何で跡部 景吾さんこんな俺様なのよ。
私の景吾様像はどこへ!?

優しくて、何か悩んだ時には「大丈夫かい?」なんて手を差し延べる景吾様はいずこへ!?




「顔に出すな。もう黙れ、飯がまずくなる。」


彼はもう私なんかを相手にするよりご飯に手をつけていた。


それも周りに見られている事なんて気にもせずパクパクと食べている。




さすが…。プレッシャーに慣れてんのかな?


「いただきます。」

私も一人睨めっこはさすがに恥ずかしいのでご飯を頂く事にした。


今は目の前にコイツがいるから、パクパクと食べられる。

昼のように一人じゃないから…。





「跡部…くん?」

そう呼んだ瞬間めちゃめちゃ嫌な顔をされた。


「何でここでも名字呼びされなきゃなんねぇんだ。」

「え?じゃあ何て呼べばいいのよ!」


呼び捨てなんてしたら殺されそうだ。だからと言って君付けもこの男に気持ち悪い。


「名前で呼べよ。」


「…え!?やっぱり景吾くん、になるの?」


「お前は馬鹿か。呼び捨てに決まってんだろ。」



え…えぇ!?



「景…吾?」

「それでいいんだよ。」



何だか名前を呼んだのが恥ずかしかった。


別に男子を呼び捨てにするのなんて初めてじゃない。なのに何で…?



「お前顔赤いぞ。」

「…は!?んな事ないから!」


顔が赤くなってるのが自分でも分かる程熱い。でもそれがバレるのが嫌で必死に目の前のディナーを口に運ぶ。




この時、私は今まで彼が一人でご飯を食べてた事なんて気づかなかったんだ。

それがどんだけ寂しい事かも。









continue



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あきゅろす。
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