前編V
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那月は翔の両腕を掴んだまま彼のベッドへと移動すると必然的に翔も一緒に動くしかなく、なされるままベッドに仰向けで寝かされてしまう。
「うわあっ! ってて…、いっ! お、おいっ止めっ!」
那月は翔の両腕を片手で抑え込み、空いたもう片方の手で翔自身の根元から先端にかけてを人差し指でなぞる。
「ちょっ、なに触って…那月っ!?」
足をバタつかせようにも両脚は那月に馬乗りにされ動かせない上、腕も動かせない翔はされるがままに声を出すしか出来ない。
「フニフニ柔らかいです、翔ちゃんのバナナさん…、そうだバナナさんの皮を剥きましょう!」
「え…あっ、やめっ…、んうっ//」
今までなぞるだけだった那月の指は、今度は翔自身の先端を親指と人差し指で摘まみ、ゆっくりと皮を剥いて行く。
その後も自身を擦ることをやめない。
「翔ちゃんのバナナさん、中身も綺麗なピンク色で…」
「うあっ、いやだっ! あっ…、くっ、ぅ…」
クニクニと先端から付根まで丹念に扱かれると翔の口からは否応にも鼻に掛かった甘ったるい声が漏れそうになってしまう。
だが翔はそれを強気な態度をとって、なんとか必死に快感を持ち堪えようとするが、ついに限界を迎え自身はムクムクと頭をもたげ始めてしまう。
「あっ、翔ちゃんのバナナさんが少しずつ大きくなってきました」
「なつ…き、触るんじゃねえ!」
どんなに強がってても身体というものは不思議なもので、性器を弄られればそれが同性からもたらされた刺激であっても性器は素直に反応してしまう。
そんな自分自身が悔しいのに、抵抗することも出来ない翔はキッと那月を怒鳴り睨みつけてしまう。
「睨んでくる翔ちゃん可愛い…、もっとムキムキしてあげますね!」
「人の話をき…けぇっ! んっ…ぅ//」
那月にかかれば怒鳴るのも睨むのも全て可愛いの一言で片付けられてしまい効果がないのか、那月は笑顔のまま翔のペニスを擦り続ける。
「翔ちゃんのバナナさんとっても綺麗ですけど、翔ちゃんは自分のバナナさんを弄ったことありますか?」
弄ったこととは勿論自慰の事を言っているのだろう。
「いじっ、そっ…そんなコト那月に関係ない…、だろ…」
那月は一旦翔の性器を擦る手を止めると、普段は見せることの無い真剣な表情で翔を見つめ、喋りだした。
「僕はしていますよ」
「はあっ? んなこと言わなくてっ…」
「翔ちゃんのコトを考えて」
「へっ…、今何て言っ…」
那月からまさかの衝撃的な告白を聞かされてしまう翔。
「翔ちゃんの事を考えるだけで、僕も今の翔ちゃんみたく自分のバナナさんが大きくなって、弄るとすぐ気持ち良くなってしまいます」
「那月…、お前…」
「その証拠に、ほら」
そう言って那月は目線を自分の下半身に落とした。
翔もそれに従って視線を那月の股間に向けると、そこには那月のペニスが自分のズボンを大きく押し上げ存在を主張していた。
「なつ…、き…」
翔はズボン越しでも分かってしまう、自分のそれよりもかなり大きな那月のそれから目が離せなかった。
「どうしたのですか翔ちゃん?」
那月にそう言われ、ハッと我に帰った翔は先ほど那月が言っていた言葉を思い出す。
『僕はしていますよ、翔ちゃんのコトを考えて』
那月が翔を性の対象として見ていて、自慰をする際の性的興奮を高める為の素材として使われていたと言う事実。
有体に言えば、那月は翔をオカズにしていたという事。
翔はショックを隠せない。
それは至極当然の反応である。
幼少の頃からの長い付き合いだけど、ただの友人だとしか認識していなかったのだから。
「………」
そう思うと翔は自然に目から涙を流していた。
「どうしたのです翔ちゃん、…何で泣いてるんです?」
「こ…なの、…か……よ…」
翔は震える声で喋り始めた。
「翔ちゃん?」
「こんなの、…おかしいよっ! 何でそんなこと平然と言えるんだよっ!!」
「翔ちゃん、何を言って…?」
さすがに先ほどまでとはまったく違う雰囲気の翔に、那月の表情からは笑顔が失われ、翔の両腕を拘束していた手も離された。
「どうして俺をオカズにしてヤッてるって、本人に向かって平気で言えるんだよっ!」
翔は自由になった両腕で自分の顔を隠した。
それは泣いてる顔を見られたくないのと、那月の顔をこれ以上見たくなかったから。
「翔ちゃんは…嫌だったのですか?」
「あたりまえだろっ! 普通そんな事言わないっ!!」
「あたりまえの事ですか…」
「そうだよっ、言った那月は平気かもしんないけど、言われた俺はどうすれば良いんだよっ!? …今まで普通の友達だと思ってただけなのにっ!」
「友達…」
翔のその言葉に那月は心にポカリと穴の空いたような感覚を覚えた。
「…うう……」
自分の下で裸のまま泣き崩れている翔を見る那月。
顔は両腕で覆われていて見えないが、瞳から溢れてくる涙は頬を伝ってベッドを濡らしていた。
「…ごめんなさい、翔ちゃん」
那月は翔に聞こえるか聞こえないか程の声量で呟くと、彼の上から退き立ち上がった。
数秒後、パタンと扉が閉まる音が翔の耳に聞こえてきた。
どうやら那月は部屋から出て行った様だった。
しかし、翔はベッドの上からピクリとも動かず、ただ泣いていた。
中編へ続く
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